第25話

 それからもいろいろあったのだけれど、彼女とのキスよりも衝撃鉄器なものはなかった。

 そして、ついにホテルに着いた。

 この方輝はものすごく高いと有名で、中学生二人で止まっていいのか本当に疑問に思ってしまう。


 フロントに着くと、平井さんが受付に行ってくれた。


「本日予約していた川崎です」


 少し離れたところから聞いていたのだけれども、俺の名前が聞こえてきた。

 何でおれの名前を使っているのだろう?

 不思議に思ったけれど、直ぐにその答えを知ることになった。


「あの……もしかして、作曲家の川崎さんじゃないですか?」


「いえ、彼は後ろにいるあの人です」


 そう言って、平井さんは俺のことを指してきた。

 スタッフさんと目が合ったので軽く頭を下げると、スタッフさんが俺に近寄ってきて手を握ってきた。


「実は川崎さんの曲ものすごく好きなんです! 特に曲の終わり方とかが好きで好きで……!」


「あ、ありがとうございます」


「はっ、失礼しました。まさか本人と会えるとは思っていなかったので……。鍵はこちらになります」


 そう言うと、スタッフさんはものすごい笑顔で見送ってくれた。



「どう、私が思いついたのよ?」


「素直にすごいと思う、でも何で……」


「さあ、なんででしょうね」


 平井さんはそう言うと、唇の近くに人差し指を持っていき、何か裏のありそうな顔で笑った。

 この顔もものすごくかわいらしい。



 そうこうしているうちに、ついに部屋の中には入れた。

 とりあえず荷物を置いてのんびりしていたのだけれど……

 外はすでに真っ暗になっていた。

 それに、今日は昼食を食べていないからお腹がすいてきた。

 そろそろレストランに誘おうかなぁ。


「平井さん、そろそろレストラ……ってなんでお弁当がたくさん?!」


 平井さんのことを呼び出そうと思ってそこを見てみると、たくさんのお弁当箱が彼女の目の前に並べてあった。

 これは何かのドッキリとかそういう感じのものなのだろうか?

 それとも、単純に本物のお弁当……?

 いろいろな考えが頭の中をよぎった。


「お昼用に作ったんだけど、結局食べなかったから今食べてるの!」


「これ全部一人で食べれないだろ、それになんで10個近くも作ったんだ?」


「川崎君の好きな食べ物わからなかったから……とりあえずたくさん作ってみたんです」


 少し悩んだけれども、俺もお腹がものすごくすいていたので彼女の横で食べた。


「おいしいですか……?」


「うん! とっても美味しいよ!」


 そう言うと、彼女はニコッと最高の笑顔を見せてくれた。


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