第17話

 昼休み。


「校長先生って、ただただ怖いだけじゃなかったんだな~」


「川崎のおかげで迷惑女を排除できたね!」


「うん、川崎君のお手柄だと思う!」


 そんなことを勝手に言っているクラスメイト達を背景にして、俺は彼女との待ち合わせの場所まで向かった。

 今朝突然言われたデート……のような軽い散歩のようなものみたいなものの計画を立てることになったのだった。


「川崎さんもうきたんですね! 結構早かったですね!」


 彼女と待ち合わせしていた教室に入ると、彼女が席を立ってお辞儀をしてくれた。


「そんなことしなくていいよ、それに呼び捨てでいいから。もっと……恋人らしくというか、仲良さそうに話さない?」


「そ、それじゃあ博人……さん。早速ですけれど、東京ネコランドとかに行ってみたいんですよ! とりあえず2週間後くらいの土日の一泊二日で……」


「えっネコランドに行くのか?! しかも泊りで行くつもりなのか?」


 平井さんのとんでもない提案に思わず困惑してしまった。

 あのホテル代だけでも10万円かかってしまうところに泊まるのか……。

 予算……というか、普通に俺の金じゃあ無理だ。


 だけれども、彼女に素直にそう言うことは難しかったので、苦笑いすることしかできなかった。


 平井さんの目の前で金についてのことを言うのは何とかなぁ……

 そう思って困っていると、彼女がパンフレットを見せてきた。


「ネコランドって泊まるのあんまり高くないんですよね~。20万円で満喫できるんだもの」


 あれ……俺の聞き間違いなのだろうか?

 でも、確かに彼女は”安い”って言ってたような気がするんだけれどなぁ……

 ね、念のためにもう一回だけ聞いてみよう。



「なあ平井さん、多分間違いだと思うんだけれど、今20万円を安いって言ったのか……?」


「はい、お父様だったら普通に出してくれそうだったので……」





 結局、ほとんどのことを彼女に任せることになってしまったんド絵数分で話し合いは終った。

 まさか、あのお父さんが大企業の社長だったとは……。


「じゃあまた明日」


「はい、今日はありがとうございました!」


 いつでも礼儀正しいなぁ……。

 そんなことを考えながら歩いていたら、ものすごくよい曲のアイディアが浮かび上がってきた。


 せっかく半分近くまで作っていた曲があったのだけれど、俺は今すぐにこの曲が作りたいんだ!


 そう思った俺は担任に事情を話して、直ぐに早退した。

 一秒でも早く作曲したいんだぁぁぁぁ!

 そう思いながら家まで全力で走った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る