第16話
「てめぇ……何で笑っているんだよ!」
俺がクスクスと笑っていると、宮口が最後の力を振り絞るようにして俺に向かって怒鳴ってきた。
ここまで追い詰められているのに、まだあんなに怒鳴れる力があるのか……。
ちょっと驚いたけれど、それ以上にあきれてしまった。
「別に? 仲間に裏切られている元いじめっ子を見てるだけだけど? あまりにもかわいそうだったから、思わず笑っちゃったんだ」
「て、てめぇ……」
昨日のおとなしい宮口とは大違いで、彼女は俺に襲い掛かろうとしてきた。
しかし、とっさの判断で友人たちが宮口のことを取り押さえていた。
友人たちを引き離そうとしながら、彼女は叫んでいた。
「絶対許さねぇからなぁぁぁ!」
宮口がそう叫ぶのと同時に、廊下からちょっと大きな足音が聞こえてきた。
その音のした方を見てみると、なんと校長先生がとても怖い顔をしながらこちらを見てきた。
うちの学校の校長は日本一怖いといわれるくらい常時不機嫌だし、それになによりもウソツキが大嫌いとよく言っていた。
「ここら辺から騒がしい声が聞こえてきたらしいのだけれど……、心当たりのあるやつはいるか? まあ、そこで暴れている奴だとは思うんだけれどなぁ」
校長先生はそう言って、野次馬たちをどかして宮口に近づいた。
近づいてくる校長先生に怒られるのを防ぐためなのか、彼女は適当な言い訳を言い始めたのだ。
「ち、違うんですよ先生! この川崎とか言うやつが暴力をふるってきたんですよ! そのことをクラスメイトに話したら、よくわからないけれどこんなことにされて……」
「何でクラスメイトに話すんだ? そんなことをするんだったら普通担任に話をするんじゃないか?」
「そ、それは……」
宮口はまだでたらめを言いたそうにしていたけれど、校長先生がそいつのことをにらみつけると、ついに黙った。
校長先生は小さくため息をついてから、宮口に”お話”を始めた。
「俺はお前みたいに責任転嫁をする奴が一番嫌いなんだよ。何でかわかるか? まあいい、今日は授業できないと思ってくれ」
そう言って校長先生は彼女のことを職員室のほうまで向かって行った。
「ざまぁみろ」
まだ校長先生が近くにいたので声に出すことはできなかったのだけれども、心の中では思いっきりガッツポーズを取っていた。
クラスメイトだけでなく、先生にもあんなことを言っていることがばれてしまった宮口は、おそらく怒られるだけでは済まされないだろう。
俺のことをひたすらいじめてきた報いを……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます