第12話
家に帰って一息ついていると、いつもは空気くらい静かなスマホが珍しく音を発した。
ニュースとかのアプリは入れてないし……そもそも、今までなったことないし。
いったいなんの通知なのだろう?
不思議に思いながらも、とりあえずそれを取ってみると、どこかで見たことのあるような気がするメールアドレスからのメールだった。
中身を見たらわかるかな……?
「お昼の説はありがとうございました! いきなりで申し訳ないのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」
丁寧すぎる文章ですぐにピンときた。
平井さんだ!
俺がそのことを思い出して返信を書き込んでいると、母親が俺の部屋に入ってきた。
「博人、あなたにカワイイお客様が来てるわよ。早くリビングまで来なさい」
「お客様? 誰とも会う約束なんてしてなかったと思うんだけどなぁ」
母親の声だけではだれが来ていたのか全く分からなかったので、とりあえず母親の言う通りにリビングまで向かった。
そこでおとなしく座っていたのは、なんと平井さんだったのだ!
「住所教えてないはずなんだけど……なんで家わかったの?」
「それは……えーと、なんといえばいいのでしょうか」
平井さんが説明に困っていると、母親が彼女に助け舟を出した。
「さっき平井ちゃんが電話をくれたのよ、直接会って話したかったみたいだから住所を教えたら『今から行きます!』って言ってくれたのよ。感謝しなさいよ?」
母親は助け舟を出すと、直ぐに大泥へ戻っていった。
もしかして……
『少し時間いいでしょうか』の意味は実際に会って話したいという意味だったのだろうか?
だったら、今までのことに何となく説明がつく。
「それにしても、いつ電話かけてくれたの? 全然気づかなかったんだけど……」
「学校出てすぐに電話しました。そしたら家を教えてもらえたのでそのまま直でここまで来ちゃいました!」
平井さんはそう言って笑っていた。
家に連絡をしたのか心配になってしまったけれど、彼女のこの性格なら大丈夫だろうと踏んでそこには踏み込まないことにした。
立ちながら話しているのも足が疲れてきたので、彼女と反対の席に座ろうとしていたら、また母親が現れた。
「二人とも距離取りすぎじゃない? せっかくだから部屋の中で話しちゃえばいいのに」
母親の提案を聞くと、平井さんは目をキラキラさせてこちらを見つめてきた。
すぐにでもいえてあげたかったのだけれど、部屋の中が散らかっていたのをもいだしたので、少し部屋の中を掃除してから彼女を入れたかった。
「ちょっと待っててね」
平井さんにそう言うと、彼女は小小さくうなずいてうちの中を物珍しそうに見始めた。
恥ずかしいところを見られる前に、早く掃除を終わらせなければ!
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