第7話

 俺のことをものすごく褒めてくれるのはうれしかったのだけれど、しらない人たちをずっと見ているのはつまらなかったので、特訓用に用意してもらえた部屋にもどることにした。

 ネットカフェみたいな個室だったのだけれど、作曲ソフトが入っていたのでとりあえず前回の曲と似たようなものを作り始めることにした。

 今回はどんな内容にしようかなー。


 そのイメージを膨らませて、イメージ通りに曲を作り始めたのだけれど、自分のイメージ通りに曲が作れるのがものすごく楽しい!

 真っ白なキャンパスを自分の思い通りの絵で塗りつぶすようなこの感覚は、自分の中でものすごく楽しかった。


「ねえ博人君、ちょっといいかな? すぐに終わるからさ……」


 スタッフさんに呼び出されたので、、俺はちょっと怖くなってついていこうとしたのだけれども、そこは会議室のようなところで椅子と長い机がたくさん置いてあった。

 もしかして、何か起こられるようなことをしてしまったのだろうか……?


 そう思って不安になっていると、スタッフさんが数枚の紙を渡してきた。

 それを見てみたのだけれど、その中には難しそうな漢字や100万円という大金が書かれていたので、俺は読むのをやめてしまった。


「すいません、こういう難しいもの呼んだことないのでちょっと……」


 俺が申し訳なさそうにそう言うと、スタッフさんはその人よりも少し偉そうな人を呼び出して、俺の目の前で相談をしていた。


「博人様はこの金額ではご納得いただけないようで……」



「本当か、それじゃあ倍の契約にしたまえ。なんとしてでも契約を取り付けてくれよ!」


 何だかよくわかならないなぁ……

 そう思って少し不思議に思いながらもう一回あの紙を見てみたのだけれど、今度は何となく読めてきた。


 要約すると”この曲を100万円で売る……”みたいな感じのことが書いてあった。

 もしかして、俺が適当に作った曲が100万円とかいうものすごい金額で買い取ってくれるのか?!

 俺がそのことに気づいて驚いていると、白髪をきれいに整えているおじさんがきた。


「君が川崎君か……、さっそくで申し訳ないのだけれど、値段交渉に入りたいと思うんだ」


「は、はい……」


 俺はちょっと緊張しながら返事をした。

 そうすると、その人は目を瞑ってから話を始めた。


「君の曲は本当に素晴らしいから、是非当社から出したいんだよ……だから、1000万円でどうだろうか……? これ以上の金額はさすがに出せない」


 その人はそう言ってさっきとほぼ同じ文面のものを見せてきた。

 違ったのは、さっきは100万円という表示だったところが1000万円になっていたということだ。

 もしかして、これにうなずけば1000万円がもらえるのか……?

 そう思った俺はすぐにうなずいた。


「おお、1000万円はあとで振り込んでおくよ。それじゃあその紙は大事に保管しておいてね」



 そう言うと、その人は会議室から出て行った。

 その顔は笑みであふれていたのだけれど、俺にはよくわからなかったのでまたネットカフェの一室みたいなところに戻って作曲を始めた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る