幕間 友人の話

噂が流言であったことがわかると、島津義弘ら三将が吉清の元に集結した。


「先の噂が徳川の手の者によることはわかりましたが、なぜ木村殿はあそこまで驚いていたのですか? 私には、木村殿が密通したゆえ動揺したようにしか見えなかったのですが……」


「うむ。話を聞いたときは半信半疑じゃったが、木村殿の顔で真実なのだと確信してしもうたわい」


立花統虎、真田昌幸が説明を求めるような目で吉清を見る。


これ以上隠しては、再び面倒なことになりかねない。


また、この場にいるのは、流言を流布されてなお吉清を信じてくれた者たちである。


そんな彼らに真実を語るのが最低限の道理であり、通さねばならない筋のような気がした。


「実は……」


昔、淀殿の元を訪れた際に襲われたことを話すと、その場にいた全員が驚愕した。


「なんと……」


「そのようなことが……」


「じゃっどん、にわかに信じられん。あん淀殿が、そげなことを……」


未だ半信半疑の三将に、真田信繁が前に出た。


「恐れながら、それがしの友人に、木村様とまったく同じ目に合うた者がございます。その者の申すことと、木村様の仰ること、寸分たがいませぬ」


「たしか、真田殿の子息は太閤殿下の元で小姓をしておりましたな」


「なるほど、そげなこっなら事情を知っちょっのも納得じゃ」


立花統虎、島津義弘が得心した様子で頷く。


「とにかく、これで気が晴れました。木村殿には話したくないことを語らせてしまい、申し訳ありませぬ。

……このことは、我らの胸の内に留めておきましょう」


立花統虎が締めると、島津義弘、真田昌幸が頷いた。


そのまま軍議を進める傍ら、昌幸が側に控えていた信繁に静かに耳打ちした。


「ところで源二郎、その友人とやらは、今どこで何をしておるのじゃ」


「えっ!? いや、それは……」


目に見えて狼狽する信繁に、すべてを悟った昌幸がため息をついた。


「……いないのだな? その友人とやらは……」


「申し訳ございません……」


「やれやれ……このことは、金輪際他言するでないぞ?」


「も、もちろんにございます!」


軍議ののち、晴れ晴れとした顔で自陣に戻る島津義弘、立花統虎とは対象的に、昌幸は暗い顔で自陣に戻るのだった。




あとがき

恋愛相談でよくあるやつですね

「これは友達の話なんだけど~」から始まるやつです。



明日の投稿はお休みさせていただきます

次回の更新は1/24です

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