第23話 内陸部侵攻と開発

 沿岸部を完全に制圧すると、明から連れてきた職人の奴隷に中華風の建物を作らせた。


 高山国の北部、中部、南部の港町を、それぞれ台北、台中、台南と名づけた。

 それぞれ大道寺直英、四釜隆秀、亀井茲矩に奉行を任せ、吉清は内陸部へ侵攻することにした。


 内陸部に住む首狩り族は、草むらに隠れて奇襲を仕掛ける。


 様々な部族が混在する中、自分の部族を守るために必要な儀式なのだという。


 そうして多民族、多部族の首を狩ることで、成人として認められるのだ。


 捕虜にした倭寇や、明から連れてきた奴隷に草むらの中に歩かせ、避雷針代わりに首狩り族の潜んでいそうな草むらを歩かせる。


 そうして、こちらに奇襲を仕掛けてきた首切り族を返り討ちにした。部族を従属させ、配下に従えた際は無闇な首狩りを禁じ、米を作らせた。


 従えた部族を、対首狩り族の最前線に立たせ、新たな集落を攻め落とす。


 そうして西部に広がる平野部を平定する傍ら、支配下に収めた平地に奴隷を使って畑を耕させた。


 首狩り族の掃除や開墾に有効活用した明の奴隷は日本で売り飛ばし、新たに日本から別の奴隷を連れてきた。


 明の奴隷では言葉の壁があるため、領民にするのなら日本人の方が楽だと考えたのだ。


 朝鮮出兵で大名たちのモチベーションが下がった要因として、朝鮮を領地としてもらっても領民との言葉の壁が大きいことが挙げられた。


 領主と領民との間に通訳が必要となるため、どうしても意志の疎通が遅れてしまう。


 平時ならまだしも、これが戦場ともなれば致命的な損害を出す可能性もある。


 また、間に通訳を挟むという都合上、どうしても間に挟まる者の権力が増大することを意味する。


 その結果、政治が腐敗するのは歴史が証明している。


 日本から奴隷を満載した船が到着すると、四釜隆秀が顔をしかめた。


「奴隷を使うのはよろしいですが、兵糧はいかがしましょう。我が軍1000に、亀井軍1000、そして新たに配下にした倭寇の分も考えると、奴隷を養う余裕はないかと……」


 吉清が笑った。


「食料なら、明の商人から買ってきてある。東北の大名に出させた分も合わせて、当面はこれでもつはずじゃ」


「なるほど……」


 商船と偽り米を買い漁り、支払いに用いた銀は倭寇に略奪させ、最終的に吉清の懐に収まる。


 そうして蓄えた米は糧食として開拓移民に配り、稼いだ銀で米を購入する。永久機関の完成である。


 高山国の倭寇はすべて支配下に収めたが、島外の倭寇に邪魔をされることも多くなった。


 彼らを同盟や従属で従え、高山国周囲の島々を根城とする倭寇を従えた。


 勢力を拡張した石巻水軍と倭寇は、さらに広範囲の港から略奪するのだった。


 そうした木村軍──改め倭寇連合に、明の水軍が動き出した。


 積極的な倭寇討伐に乗り出した明水軍は、海岸防備を強化した。


 港には定期的に巡視船を航行させ、倭寇の拠点となりえる小島や入江を徹底的に調査したのだ。


 それに対し、吉清は明水軍内部に賄賂を渡し、明水軍の航路、活動時間や場所を把握した。


 彼らを避けるように略奪を行い、時には狭い入江に誘い込んだ明水軍を襲撃するようになった。


 こうした吉清のよるリスク管理と、連携の取れた倭寇の襲撃により、明は経済的に大打撃を受け、海運を用いた輸送から河川や運河を用いた輸送へとシフトすることとなるのだった。


 そんな吉清を見て、亀井茲矩は、


(木村殿は倭寇よりも倭寇らしいな……)


 と思ったのだった。

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