139話

アスランは褒賞を貰い終えるとルリの工場に来ていた。


ルリは久しぶりにアスランが来たことに喜んでいる。


「お久しぶりですアスラン様」


「うん、久しぶり。唐突に来て悪いんだけど至急頼みたいことがあるんだ」


「雇い主の頼みは断れませんので遠慮なく言って下さい」


「悪いな。こいつをネックレスにして欲しいんだ。とにかく頑丈でオシャレだと嬉しいな」


「見たことのない、凄い綺麗な宝石ですね。いつものようにデザインはないのですか?」


「ああ、今回はこのままがいいんだ。嵌め具やチェーンといったところでオシャレに見せて欲しい」


「難しい内容ですね。ありのままの姿で美しさを表現するのですね…頑張ります、任せて下さい」


ルリは無い胸を叩きやる気を見せている。


アスランはルリへの用事が終わると装備を探しに行く。


宝物庫を見たせいか、なかなか欲しいと思う装備に巡り会えない。


そんな時クロードから誘いがあったので、アスランは気晴らしに友と遊ぶことにした。


貴族街のカフェで待ち合わせをし、店を入ると優雅にコーヒーを飲んでいるクロードがいた。


絵に描いたような美男子が周りの女性から注目を浴びていた。


そんな中アスランが声をかけに行くと忽ち騒ぎとなった。


「あ、あれってドラゴンを倒した英雄様じゃないの?」


「そうよ。パレードで見たわ」


「声を掛けてきてよ」


「私達なんて相手にされないわよ」


アスランは気にせずクロードに話掛ける。

「待った?」


「呼んだのは僕だしね。それにたまにはこうして待つのも悪くないよ」


「そう、ならいいけど。いまやクロードの人気は凄まじいからね」


「アスランには言われたくないよね。あ、ついに二人と婚約おめでとう」


「もう知ってるんだ…、有り難う」


「これでアスランを紹介しろっていう声に悩まされることがなくなったよ」


「クロードにそんな声を掛ける人がいるんだ」


「ヤバイ程にな」


「次はクロードの番だから、これから大変になってくれ」


「なに、その余裕?」


アスランはフッフッフと笑いながら王妃の件を話した。


「その話ヤバイな。アスランも何気に尻に敷かれそうだよな」


「自分でもそんな気がするよ。あの二人強そうだからね」


こうして友と遊んでいると一人の女性がクロードの隣りに座りだした。


それを見たアスランが驚き声にだした。


「も、もしかしてそういう関係?」


女性は声を上げて否定した。


「ち、違います。クロードがいつまでも声を掛けてくれないからしょうがなく来させていただきました」


アスランは疑問符でいっぱいだ。


「ごめんごめん忘れてた」


「忘れてたじゃないわよ。ずっと影から待ってたのよ」


クロードはアスランに事情を話す。


「なるほど~、簡潔に言うとスキルを見て何か思いつかないか聞きたいと」


「そうなんです。お願いします。あ、申し遅れました。私の名前は、サクラ・レーダリオン」


「レーダリオンって、あの?」


「そう。僕と同じ伯爵家だけど知名度抜群のレーダリオンね」


「軍事貴族レーダリオンだっけ?」


「そう。強い血筋を残すためだけに何人もの妾を娶り、知略と武力を兼ねそろえた者を当主とし長年不動の地位を築いていると言われている…。」


「も、もうやめて下さい。は、恥ずかしいです」


「その中で血統主の子供なのにスキルに恵まれず政略結婚の道具にされようとしているサクラちゃんです」


「クロードがそこまでフレンドリーなのはビックリだね」


「こいつとは腐れ縁だからな」


「それにしてもサクラなんて変わった名前だね?」


「お母様がさくらの木が好きで、そこからいただいたそうです。」


「そうなんだ、素敵な名前だね」


「ク、クロード?天然の人たらしがいる」


「だから言っただろ、惚れないように気をつけろと」


「君達阿吽の呼吸だね。結婚したら?今やクロードなら政略結婚の相手に相応しいだろうに」


サクラは手を叩き納得している。


「確かに。今のクロードならお父様も認めてくれるかも。クロード、私と結婚してみない?」


クロードの顔は真っ赤となり、しどろもどろしている。


アスランは事情を察したのか友のために一肌脱ぐことにした。


「こんなに綺麗で可愛いのに嫌なの?クロードがいらないなら貰っちゃおうかな~。これでも一応はSランク冒険者だし」


「嫌なわけないだろう。昔からずっと好きだったのに、他のやつにとられてたまるかぁ~~~。」


アスランはニヤリと笑い。


サクラは頬を真っ赤に染めた。


ちなみにクロードはハッと気づき我に返った。


「ご馳走さまでした」


「い、いや、これは…」


「クロード、今更男らしくないな~」


「こんな私でいいの?強さだけを追い求めてきたから胸もないし」


「そんなの関係ない、サクラがいいんだよ」


「もう俺は必要なさそうだから、今度またゆっくり話そうクロード。あ、ちなみに君のスキルはなんだったの?」


サクラは未だに照れながら質問に答える。

「糸と五指なんだけど…、やはり使えないよね」


アスランはため息をついて心の中で叫んだ


ふざけるなぁ~~~~~~~~~~~~。


心の中で叫んでスッキリしたアスランは後日スキルを指導することとなった。


これがきっかけで未来のS級冒険者が生まれるとも知らずに…。





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