137話
ベルトラン王は応接室に入るなりアスランに声をかけた。
「よぉ~、色男。順調そうだな」
「え、もしかしてベルトラン王の仕業ですか?」
「そんな訳ないだろう。政略結婚以外に口をだすわけなかろう。二人の自らの意思だ」
「そう…ですか…。こんな綺麗な二人に告白されるとは思っていなくて…」
「まあ、普通の貴族は一夫多妻制が基本だから、簡単に俺のものになれって口説くやつが多いからな。まあ~、よかったでわないか、中央大陸に行ってもこれで誘惑に惑わされないだろう?」
「やはり二人を煽ったんですね、まあいいですけど」
「では、今回呼んだ褒賞の件の話をしようか?」
「え、今までのは何だったんですか?それにあそこでチラチラ見てる王妃はなんなんですか?」
「あ~、あれは気にしなくてよい」
あれ呼ばわりされた王妃は凄い勢いでベルトラン王の側までいくとおもいっきり頭をハリセンで叩いた。
スパーンといい音がなり、ベルトラン王は頭はさすっている。
「さぁ、アスラン私の胸に飛び込んでおいで」
アスランはエリーナとベルトラン王を交互に見ながら訴えかけている。
「エリネス、アスランが困っているだろう」
「何を困ることがあるのです?これからは親子になるのですよ」
「あ~、なるほど。アスラン、息子が新たにできて嬉しいそうだ」
「は、はぁ~、喜んでいただけたなら幸いです」
「そんな堅苦しい言葉はいらないのよ、早く」
アスランは躊躇いながらエリネス王妃の胸に飛び込もうとした時、気持ちの良い音が響いた。
何とエリーナが王妃のもっていたハリセンを持ち王妃の頭を叩いたからだ。
「お母様、アスランは私とエミリアのです」
「え~、いいじゃない。イケメンだし、親子になるんだし、イケメンだし」
「お母様、心の声が駄々洩れです。お父様で我慢して下さい」
「アスラン、俺は泣いてもいいか?」
「心中お察しいたします」
「アスラン、何かと大変になるから人妻には手をだすなよ?」
「も、もちろんです」
「アスラン、親子なら問題ないわ。さぁ、早く」
スパーン。
再度エリーナの持つハリセンが鳴り響く。
「お母様、お遊びはそこまでですわ。エミリアも困っていますよ」
「あら、エミリアちゃん気にしないで」
「お、お茶会の時の優雅な姿しか見ていませんでしたのでビックリしました」
「お茶会なんて媚と自慢話ばかりで面白くないのよ。そこにさっそうと表れた一輪の花。これを楽しまないと損した気分になると思わない?」
誰もが呆気にとられ、初めて見るエミリアは王妃の本当の姿に戸惑っている。
「さてこの片にしとこうかしら。エミリア、エリーナ、良く聞きなさい。貴方達はSランク冒険者の婚約者なの。強く逞しくないと今後やっていけませんよ…、そして強い意思でアスランを支えなさい。そうでなければ私が貰いますからね」
「お母様、最後の言葉でいい話しが台無しです」
「ベルトラン王、一つ聞いてもいいですか?」
「な、なんだ」
「どちらから告白したのですか」
何故かエリネス王妃は勝ち誇っている。
「も、もちろん余からだ。若い頃は国一番の美貌を備え、物怖じしない性格が嬉しくてな…王子の立場で対等に話せる彼女に惹かれたのだが、今では…。」
「ベルトラン王、有り難うございます」
未だにエリネス王妃はどや顔をしている。
「まあ、このくらいでないと王妃は務まらないのかもな。」
「ところでアスラン、何故結婚ではなく婚約なのです」
ふと疑問を思ったように声にだす王妃。
そこへ割って入るベルトラン王
「どうせ中央大陸で自分に何かあってもエリーナ達に傷がつかないようにだろ?」
アスランは見事なまでに当てられると何も言えない。
「そんなことを考えていたの?私とエミリアはアスラン以外には絶対になびかないは、だから絶対帰ってきてね」
エミリアとエリーナは瞳をウルウルさせて訴えている。
こうして突然の王妃の乱入であったが、アスラン達はさらに絆を育んだ。
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