練習初日

次の日登校すると、心なしか視線を感じる。気のせいだろうか……


「ほらあの子じゃない?ピアスが透明だし」


「なんか普通の子っぽいね」


「でもクロード様とペアになるくらいだし、すごい魔力なのかも」


周囲からかすかに聞こえてくる声を聞く限り、気のせいではないらしい。居心地の悪さを感じ、足早にその場を立ち去る。とにかく人が少ないところに行って、落ち着こう。


とにかく夢中で歩いて、ようやく足を止めたのは封鎖された鐘塔の前だった。


クロードが皆に見られるのを嫌がる理由がよく分かる。興味本位の視線があんなに痛いものだなんて知らなかった。悪意はほとんど感じなかったから、きっとまだマシなのだろうけど。


『リリー、もう学園に着いているかい?昨日言ってた実戦練習は外でやろうと思うんだけど……』


一息ついていた時、急にクロードの声が頭に響いて驚いたが、すぐにピアスの通信だと分かった。


『はい、鐘塔のあたりにいます。どこに集合しましょうか』


『じゃあ、そこで待ってて。僕がそっちに向かうから』


クロードの声を聞いて少し安心した。……って、なに安心してるんだろう。違う違う、変に注目を浴びて、少しおかしくなってただけよ。




足音が聞こえてきて、ハッと現実に引き戻される。クロードかしら……。


振り返ると上級生らしき女の人が三人立っていた。


「あなたがリリー・ヴァンス?随分と弱そうね。本当にクロード様のペアなの?」


明らかに棘のある声だ。こんな人気のない所で声をかけてくるなんて、つけられていたのだろう。こういう時、どう対応してよいか分からない。何を言っても刺激してしまいそうで、思わず黙り込んでしまった。


「大した成績でもないくせに、クロード様にご迷惑だわ」


「魔力もないのにどうやって取り入ったのよ?」


口々に言われ、目からじわじわと涙がこみあげてくる。悪意を向けられたからではなく、図星だったから。どうしてペアに選ばれたかなんて、私が知りたいくらいだ。


「何か言いなさいよ!」


俯くリリーの様子に苛立った一人が杖を取り出し、風魔法を放った。


避ける術を持たないリリーは思わずしゃがみ込むが、いつになっても突風は来なかった。




「こんなところで何をしているの?」


「「「クロード様?!」」」


リリーが顔を上げると、シールド魔法を張っているクロードが目の前にいた。


「クロード……」


弱弱しく名前を呼ぶが、クロードは振り返らなかった。


「この子は僕の後輩なんだけど。知っててこんな仕打ちをしているの?それに、学内で許可のない戦闘は禁止されているはずだよ。」


いつものように穏やかな口調で女の人たちに話しかけている。クロード表情は見えないが、女の人たちは失神しそうなくらい青ざめていた。


「とりあえず、帰ってくれないかな。これからリリーと練習なんだ」


固まっている女の人たちにクロードが再度声をかけると、三人は弾かれたようにに去っていった。




「謝りもしないなんて、相当失礼な人たちだったね」


ようやくこちらを向いたクロードは、いつも通りの柔らかい表情をしていた。

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魔法石が導く運命 @moso_ko

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