真面目な一面

書類も提出したし、ピアスも交換した。不本意ではあるが、正式にペアとなった訳だ。


なんだかどっと疲れたわ…。


普段、家族やマーガレットとしか関わらないリリーにとって、クロードとの会話は異質である。豹変する態度や近すぎる距離感に戸惑うばかりだった。


もう帰りたい。自分の部屋でゆっくりと過ごして、一旦落ち着きたい。


「ピアスも交換した事ですし、そろそろ……」


立ち上がり、帰る準備をする。早くしないとまたクロードのペースに呑み込まれてしまう。


「何してるの?まだ帰って良いなんて言ってないよ」


そう言うクロードは笑っているが、眼の奥から威圧感が漏れ出ている。私は大人しく椅子に座り直す。


クロードは私が座るのを確認すると、自分も椅子に腰を下ろした。


『このピアスが通信にも使えるって知ってるよね。ピアスに触れながら、呼びかければ相手に伝わるからね』


クロードがピアスを触ると、頭の中に声が響いた。これが通信ということか。


『こう……でしょうか。聞こえていますか?』


試しにピアスに触れながら念じてみると、クロードがうなずいた。どうやら伝わったようだ。


「今みたいに話しかける他には、自分の場所を相手に伝えたり、魔法具を送ったりできる。結構便利なんだよ。また今度やってみようね」




私がピアスに気を取られている間に、講堂で見ていた書類を再び出して、顔合わせの実施要項を確認している。


「よし、最後に明日からのカリキュラムを大まかに決めようか。重点的に学びたい事はある?」


先ほどから急に真面目になったクロードに驚きながらも、学びたいことについて思案する。実践中心にお願いしたいけど、まずは……


「魔法の使い方からお願いしたいのですが…… 今年魔法が発動しなければ、留年してしまうんです」


こんな事を学園トップのクロードにお願いしなければならないなんて、恥ずかしすぎる。あまりの情けなさに涙が溢れてくる。


リリーは入学テストで魔力を確認されているものの、魔法を発動させる事が出来なかった。3年にもなって魔法が全く使えないのは、リリーくらいなものだった。


「さっきも言ったけど、絶対使えるようにしてあげるから心配しないで」


力強い言葉を聞いてると、本当にできる気がしてくる。私、まだ魔法が使えるようになる可能性があるのかな。もしそうなら頑張りたい……!


「よ、よろしくお願いします!」


「じゃあ明日は簡単な実践でリリーの様子を見せてもらって、その後、使い方から少しずつ練習していこうね」


怖いところもあるけど、真面目で親切なところもあるんだな。優しく話すクロードを見て、リリーはすっかり信頼してしまった。


帰宅してから父や母に、良い人が先輩ペアになったと報告してしまうほどに。

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