ピアスの交換

「え、いやいや……。私不器用なので怪我させてしまうかもしれないですし!」


「いいから、早く」


クロードはリリーの前に跪き、手首を掴んで自身の耳元に近づけた。振り払おうとしたが、銀色の瞳に見つめられるとそれ以上拒絶出来なかった。


傷つけないように慎重にピアスをつけようとするが、手が震えて上手くいかない。もっとよく見ようと顔を近づけると、クロードがにこにこと笑みを深めた。


「なんだかキス出来そうな距離だね」


「か、からかわないで前向いててください!」


焦れば焦るほどじわじわと手に汗が溜まり、ピアスがつるつると滑る。失敗するたびにクロードがクスクスと楽しげにしているのが、なんだか癪だ。


ようやくつけ終わると、クロードは満足そうに左耳に指を這わせる。慈しむような表情でピアスを撫でている様子を見ていると、こちらがドキドキしてしまう。


「えーっと、クロードのピアスもください」


ドキドキを悟られないように視線を外す。


クロードは、そうだったと呟きながら透明な自分の杖を取り出し、一振りした。透明な魔法石がキラキラと光り、そこからピアスがころんと現れた。涙型の石がゆらゆらと揺れる可愛らしいデザインだ。


今、作り出したんだろうか。リリーがピアスに見とれていると、クロードが近づいてきてリリーの右耳に触れた。


「ひゃっ……」


身をよじって椅子から立ち上がろうとすると、クロードに肩を押さえつけられた。


「動かないで。ちゃんとつけてあげるから」


「自分で!自分でつけますから……!」


つけるだけでも緊張するのに、つけてもらうなんて心臓がもたない。


どうにか逃げようとするが、押さえつけられていては大した抵抗もできない。ちらりとクロードの顔を窺うと、先ほどとは違って真剣な顔をしている。銀色の瞳に見つめられて、また動けなくなった。瞳に魔法でもかけているのだろうか。


固まっている間に、クロードは右耳に手を添えピアスを近づける。


「んー……ちょっと上手くつかないな、もう少しじっとしてて」


そう言いながら、先ほどよりもぐっと近づいてくる。耳にクロードの息がかかって、ぞわぞわとした感覚に身体がビクッと跳ねる。


「じっとしてって言ってるのに、仕方のない子だね」


囁かれると余計に身体が動く。その度に耳元で注意されて、耳が熱くなってきた。その熱を確かめるように、指が耳の上の方にも上がってくる。そこはピアスと関係ないんじゃ……


「ま、まだっ……ですか?っていうか、そこっ…」


やっと思いで口を開くと、クロードの手は耳の輪郭をすーっとなぞり、離れていった。


「あーごめんごめん。耳、真っ赤にしちゃって、反応が可愛いからさ」


と悪びれなく笑う。




右手で耳を触って確認すると、ピアスはちゃんとついていた。

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