透明な本性

「ん?それって大魔導師の鑑定結果に逆らいたいほど、僕とのペアが嫌ってこと?」


クロードの声が急に鋭くなり、リリーは再び息苦しいほどの威圧感に襲われた。驚いて顔を上げるとクロードの表情は先程と全く変わっておらず、口元には柔らかな笑みを浮かべていた。


怖い……。恐怖で固まってしまった私を見て、クロードはおもむろに立ち上がる。ゆっくり近づいてきて、私の肩にぽんっと左手を置いた。


「そんな訳ない、よね。リリー、ここにサインして」


右手で私の手にペンを握らせながら、グッと力を込めてきた。握られた手がカタカタと震える。距離が近い分、先ほどよりも息苦しく感じて呼吸も浅くなる。逃げたい、逃げたい、逃げたい―


「あぁ、緊張で手が震えてるね。うまく書けないなら手助けしてあげるよ」


そう囁かれた瞬間、手が勝手に動き出し「リリー・ヴァンス」と書かされた。魔法……?いや、学園の書類は不正が出来ないように保護がかけられているはず。それを超える魔法なの?


クロードは記入された確定書を満足そうに眺めて、席に戻る。


「これで大丈夫だね。あとはーピアスの交換だけど……先に確定書を出しに行こっか」


クロードの声色が元に戻ると同時に、威圧感が消えた。急に息を吸えるようになり、ゴホゴホとむせ返ってしまう。


息を整えている間に、クロードは私の鞄を持ってスタスタと歩き出した。


「あのっ、ちょっと……!」


急いで後を追う。




「ま、待ってください、クロードっ……」


講堂を出たところでようやく追いついた。クロードは私を横目でちらりと見ると、歩く速度を少し緩めた。


「ごめんね、皆見てたから早く外に出たくて。それに、確定書を出してしまえばリリーは逃げられない」


冗談っぽく笑うクロードを見ていると、先ほどの恐怖が嘘のようだ。どう言うつもりなのかと聞きたいのに、うまく言葉に出来ない。黙ったままトボトボと隣を歩く。




「そう言えば、リリーは2年になってから急に成績が落ちたみたいだね。実践が苦手なのかな?」


「なぜご存知なのですか?!」


急に自分の成績を当てられた驚きで、思わず普通に返事をしてしまった。


「あぁ、ペア通知と一緒に、後輩のプロフィールとか成績が送られてくるんだよ。だからリリーの事はなんでも知ってるよ」


そんな個人情報まで筒抜けにされるの?事務局に文句を言ってやりたい。


でもクロードの言う通りだ。魔法陣の読み取りや歴史の暗記しかなかった1年の時はそこそこの成績だったのに、実践が始まった去年の成績はボロボロだった。


「魔法がうまく使えないんです。なんでこの学園に受かったのか不思議なくらい……」


自嘲的に呟くと、クロードはピタッと歩みを止めてこちらを向いた。


「この学園に受かったって事は、魔法の才能があるって事だよ。それに、僕が先輩になったからもう大丈夫。すぐに使えるようになるよ」


真剣な眼差しのクロードは、見惚れてしまいそうなくらい綺麗だった。




……いや、見とれちゃダメだ。クロードこの男、さっき私のこと脅したよね?!

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