新学期準備1

5歳の誕生日に父さんから魔法の杖を授かった。


「さあリリー、この杖を持ってごらん」


自分の背丈よりも大きな杖を両手で掴むと、先端に嵌め込まれている黒い魔法石が美しい青色に変化した。アジュライトという色らしい。


これが私の魔法石……


その時の感動は今でも忘れられない。


泣き虫の私には涙色の青がピッタリだと揶揄されることもあったが、私は自分の魔法石が大好きだ。




それから10年後……


「リリー、学園から手紙が来ているわよー」


母さんから呼ばれて、リビングへと急ぐ。ラトル学園からの手紙だ。いつもの新年度の案内だけじゃなく、待ちに待ったペアの決定通知が同封されているはずだ。


自主性を重んじるラトル学園では、ペアと呼ばれる制度が存在する。希望すれば、上級生から一対一で指導が受けられるというものだ。


決まった授業がほとんどないこの学園では、学期末のテストを全てクリアすれば進級できる仕組みなのだか、去年の進級がギリギリだった私は危機感を覚え、ペアを希望したのだった。


リビングにいた母から手紙を受け取り、ワクワクしながら中を確認すると、




――――――――――

リリー・ヴァンス


以下の者とペアとなったことを通知する。



氏名:クロード・ギリブランド


学年:5


クラス:S


魔法石:無色



始業式後の顔合わせにてピアスの交換を済ませ、事務局にペア確定書を提出すること。


――――――――――




と書かれていた。


「どうして……」


予想外すぎる相手に、リリーは呆然と立ち尽くした。




「クロード様といえば、次世代の大魔導師候補のエリートで、容姿端麗、おまけに人格者だって言うじゃない?リリーと相性が良いかって言われると……」 


親友のマーガレットは通知をヒラヒラ揺らしながら、私に哀れみの表情を向けた。あまりのショックに私が弱音を吐いたら、家まで来てくれたのだ。


「そうだよ!クロード様って……男だし、魔法石の色は透明だし、何より魔力量が全然違うよ……!」


たいていのペアは魔法石が同系色、魔力量も同程度の同性である。リリー・ヴァンスとクロード・ギリブランドの間には共通点がまるでなかった。


「まあまあ、仕方ないよ。大魔導師様の鑑定は絶対だって言うし。相性の悪いペアなんて聞いたことないよ。」


マーガレットは私の頭をぽんぽんと撫でながら、励ましの言葉を口にする。


意外と相性が良いかも、なんて1ミリも思えない。だけどペア希望の取り下げは、「重大な理由がある時のみ」とされている。合わなそうだから……というのでは無理だろう。




気を落としている私の顔を覗き込んだマーガレットは、空気を変えるように立ち上がった。


「お互いペアの通知が来た事だし、ピアス作りに行かない?」


ピアス?そういえば、何か通知に書いてあったような……


「手紙の中の書類読んでないの?自分の魔法石を切り出して作ったピアスをペアで交換するんだよ。連絡手段とかに使えるの」


通知の紙を見ただけで、他の書類読んでなかった。なるほど、まずは顔合わせの前にピアスを作っとかないといけない訳ね。


「じゃあランディール魔法具店で良いかな?あそこなら加工もやっているし」


そう言って、私も立ち上がった。

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