第60話 第2層2。冒険者ギルド。そして日本。
[まえがき]
場面が頻繁に変わりますのでよろしくお願いします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
正面の扉を開けると、ここも10メートル四方の石室で正面と左右の壁の真ん中に扉が付いていた。要するに部屋を囲む4つの壁全部に扉が付いていることになる。この部屋も壁、床、天井がわずかに自然発光しているようで、俺の後ろに立つ華ちゃんのライトの光が届かないところでも暗くてまるで見えないということはなかった。
「ディテクトアノマリー!」
華ちゃんがすぐに魔法を唱えたが、部屋の中にも扉にも異常はなかった。
「ただの部屋だったな。しかしこんな部屋の中で、方向を見失ったら、目印になる物が何もないから厄介だよな」
「そうですね。
それで、オートマッピングはどうです?」
「それがまだわからない。
いや、なんだか、視界の上の方に『N』?が見える。
俺のゲーム感覚では、
俺は方向指示機能を確かめようと頭を廻らせたら、ちゃんと同じ方向に『N』が見え、振り向くと『S』がみえた。思った通り。と、言うことは、マップを表示するには『M』を押せばいいはずだ。そのはずだが、あいにく俺の頭はスマホにもパソコンにもつながっていないので、『M』を押す代わりに「マップ」と言ってみた。
これも予想通り俺の視界の右下に正方形が二つ並んで、小さい方の正方形の中に三角、もう片方の大きい方の正方形には上向きの矢印が見えた。正方形が石室で、三角が俺の位置と俺が向いている方向、上向きの矢印が上り階段を表しているのだろう。
試しにさっきまでいた階段の部屋に戻ってみたら、階段マークと三角マークが重なった。
表示が少し小さいので使いにくいが、これから先、探索範囲が広がってくるようならこんなものだろう。
「次はどっちに向かう?」
「いけるところまで、まっすぐいってみませんか?」
「第1層をちゃんと確認していなかったから、このダンジョンの広さの見当をつけるためにもそうするか。
じゃあ、次の扉を
俺は正面の扉を開いた。
この部屋も四方の壁に扉の付いた部屋だったが、部屋の真ん中に宝箱が一つ置いてあった。
「ディテクトアノマリー!」
華ちゃんの魔法で、部屋の中の宝箱だけが赤く点滅を始めた。
「アイデンティファイトラップ。
罠ではないようです。
あとは、ノックでなにか変化があるかな? ノック!」
華ちゃんがノックの魔法をかけたのだが、宝箱は赤く点滅したままだ。
「なんだろうな? 鍵穴があるようなら、スケルトンキーで蓋を開けてみるか」
俺はそう言って、宝箱をよく見ようと近づいていったらいきなり宝箱の蓋が開いて、それと同時に俺に向かって宝箱がとび上がってきた。
俺もこれには驚いたが、ある程度用心はしていたので、なんとか左手に持っていた如意棒を突き出して飛びかかってきた宝箱を突くことができた。
「宝箱に擬態したミミックだ!」
俺は如意棒を両手で持って、床に落ちてひっくり返った
如意棒は
「ミミック?」
「それらしいものに擬態していて、不意を突いて近づいてきた者を襲うモンスターだ。
実際、こいつの本当の名まえがミミックなのかは知らないがな」
「ゴブリンもいたけど、想像できないようなモンスターっているんですね」
「ミミックの場合、こういったダンジョンの中限定かもしれないけど、もしもダンジョンの外にこんなのがいたらダンジョンの中以上に厄介だぞ」
「生き物かどうかくらい分かればよかったんですが、ごめんなさい」
「いやいや、華ちゃんのデテクトなんちゃらで異常があるってわかってたから用心できたけど、分からなかったらそのまま近づいて鍵穴を探してたところだ。サンキュウな。
この黒い死骸は何かの役に立つかな? 錬金術の素材くらいにはなりそうだから、いちおうとっておこう」
ミミックらしきものの死骸をアイテムボックスにしまっておいた。華ちゃんはイヤそうな顔をしていたが、アイテムボックスは今のところ際限なく物が入るようだし、中で汁が出たり臭いが移ったりしないはずなので心配することはないんだけど、いろいろと食べ物を俺がアイテムボックスから取り出すので気になるのかもしれない。
俺はアイテムボックスの持ち主だから全く気にならないのだが、普通なら気になるか。そう言えば、蜘蛛にやられたミイラを俺も敬遠したから、全く気にならないってこともなかったわ。モンスターの死骸は、人の死体じゃないということで我慢してくれ。
「それじゃあ、先に進もう」
「はい」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
善次郎と華ちゃんが神殿所有のダンジョンの第2層を探検し始めたころ、冒険者ギルドの掲示板に新たに張り紙が貼りだされた。
張り紙には、
『アキナ神殿が所有管理するバレン南ダンジョンを探索をするため、護衛の冒険者を若干名求む』と、あった。詳細は何も書かれていなかったので、希望者は受付で詳細をたずねる必要があるということだ。
アキナ神殿が自前のダンジョンを持っていることはバレンの冒険者ならだれでも知っていることだったが、これまで一般冒険者に開放されたことはない。今回もダンジョンの探索ではなく『護衛』という名目だ。神殿兵を護衛するのもおかしな話だが、ダンジョンでのノウハウのある冒険者を雇いたいのだろうと冒険者たちは判断した。
ちなみに、バレンの北には冒険者に開放されたバレンダンジョンがあり多くの冒険者はバレンダンジョンに潜り生計を立てている。そのバレンダンジョンは現在第10層まで探索されており、第1層から第3層は探索され尽くしている。逆に言えば第4層以降探索は完了していない。当然ではあるが、バレンダンジョンが何層あるのかは不明である。
◇◇◇◇◇◇◇◇
こちらは、日本。
その日の午前11時。日本各地で地震が同時発生した。震源地はどこかの都道府県に集中するわけではなく、日本全国にまんべんなく分布していた。震度は大きなもので4、ほとんどの震度は3から2だった。
同時地震発生から間を置かず、日本各地から異変が報告された。
『金色に輝く小型ピラミッドが出現した』
[あとがき]
次話より、気持ち新章がはじまります。
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