第49話 ダンジョンへ進入。
タートル号はクラクションを鳴らしながら、でこぼこの荒れ地を神殿兵たちの方に突っ込んでいった。神殿兵たちはタートル号が近づいてきていることに気づいていたようだが、クラクションには驚いたようで、こちらの目論見通り逃げ出していった。後部座席のリサと子どもたちは俺が指示した通り耳を塞いでいた。
神殿兵たちが立っていた場所にダンジョンの出入り口があるのかと思ってそこまで車で近づいていったが、車の中から見ただけでは特に変わったものはなくただ地面に雑草が茂っているだけだった。
「みんなはそのまま待っていてくれ。降りて調べてくる」
そう言って俺はタートル号から降り、神殿兵たちが立っていたと思われる地面の上をよく調べたが、やはり何も見つけることはできなかった。
車に戻った俺は華ちゃんに、
「地面には何も見当たらなかった。神殿兵たちはなんでここらに立っていたんだろ?」
「ダンジョンの出入り口がなかったとなると、謎ですね」
「不思議だなー。
この場所は覚えたからいつでもここに転移でくることができるから、今日はこれくらいにしておくか?」
「そうですね。
あれ? 岩永さん、正面の地面の先で空気がなんだか揺らいでいませんか?」
「おっ。たしかに揺らいでいるようにみえる。
もう一度ちゃんと調べてみるか」
再度車から降りてゆらぎの近くまでいき、アイテムボックスから出した如意棒の先でゆらぎを突いてみたら、如意棒の先が消えてしまった。びっくりして如意棒を引っ張ったら如意棒の先はちゃんとくっついて戻ってきた。
なにかの魔法でゆらぎの先のもの、おそらくダンジョンの出入り口が隠されてるんじゃないか?
俺は車に残っている華ちゃんに向かって、
「華ちゃん、ちょっとここまできてくれるか?」
車を降りてやってきた華ちゃんに、
「この先、何かが隠されている。
こんな感じだ」
そう言って俺は先程のように如意棒をゆらぎに向かって突き出してやった。
「魔術で隠されているのかも知れませんが、このゆらぎそのものがダンジョンの出入り口かも知れませんよ」
俺は無意識のうちにダンジョンの出入り口ははっきり目に見える物だと思っていたようでその考えには至らなかった。たしかにその通りだ。先入観のない華ちゃんだからこそだな。
「試しに中に入ってみよう」
「大丈夫ですか?」
「神殿じゃ、華ちゃんたちでダンジョンを攻略させようとしてたんだろうから中を覗くくらいなら大丈夫だろ」
「そうですね」
「俺がいない間、何が出てくるかわからないから車の中に戻っていてくれ」
「はい。お気をつけて」
華ちゃんが車に戻ったのを見届けて、俺はゆらぎの中にまず左手を入れてみた。
中指から順に指が消えていき、手首から先が全部消えてしまった。痛くもなかったし、手を引いたらもちろん手首から先の手は繋がっていた。
入るぞー!
ちょっとだけ怖かったが、俺は意を決してゆらぎの中に踏み込んだ。
ゆらぎを越えるとそこは灰色の
転移もあるので
石室の中にはどこにも照明などないにもかかわらず、薄暗くはあるが部屋の中をちゃんと見ることができる。これが真っ暗だと松明だかランプが必要になるからな。俺の場合はそのどちらも錬金工房で簡単に作れると思うし、おそらく電池で点灯するヘッドライトだって用意することができる。それでもユーザーフレンドリーな設計はありがたい。
石室の中をざっと確認した所、石室の広さは、10メートル四方。部屋という意味では結構広い。床も壁も灰色の石でできている。壁を触った感じは自然石のようでコンクリートではないようだ。不思議ダンジョンがコンクリート製だとどこかのアトラクションのようになってしまう。それだと真剣味が半減するからある意味ありがたい。部屋の材質はどうでもいいが、問題は部屋があるだけでその先がない。要は
先程のゆらぎの件もあるので、俺は石室の壁を触りながらどこか変わったところがないかと探してみたが何も見つけることができなかった。
『うーん、たった10メートル四方しかないただの石室を兵隊がわざわざ見張るか?
勇者たちを使って、この石室を攻略する? まさかな。
おそらく何かを見落としているのだろうが、俺では今のところお手上げだ。
外のことも気になるから今日はこの辺にして戻ろう』
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