第17話 買い出し紀行

[まえがき]

なんの関係もありませんが『ヨコハマ買い出し紀行』を思い出してこのサブタイをつけました。ちなみに作者は『ヨコハマ買い出し紀行』を見たことはありません。先程Wikiで確認したら、深そうな話でした。

◇◇◇◇◇◇◇◇



 苦労というほどではないがそれなりに手間をかけて人造ダイヤモンドを作ってみたものの、値段を調べたところ、あまりに収益性が低いので断念した。硬い材料が好きな時に錬金工房で作れるようになったことだけは収穫だが、大抵のものは錬金工房内で加工可能なのでほとんど意味はない。


 何か簡単に手に入る素材を使って付加価値の高いものを作りたいが、ダイヤモンド以外になかなか思いつかない。


 向こうの世界で簡単に手に入るものでそれっぽい工芸品をネット販売でもしてやろうか。人手はかかるが、人手は雇えばいいだけだし何とかなるか? いや、やはり元手が元手だし、事業計画など作りようがないから融資など望めないし。


 なんとか即効性のある儲け話があればいいのだが。


 手っ取り早く非合法に手を染めるか? 例えば盗賊団がいたとして、その連中の貯め込んだ金品をいただけば、犯罪には違いないが、盗賊団が警察に届け出ることはまずないので、事件にならない。従って俺が逮捕、起訴されることはないはずだ。



 妄想はそれくらいにして、向こうでの生活を少しでも快適にするため、俺はアパートの戸締りを済ませて近くのスーパーに足を運んだ。そのスーパーは大型スーパーで中では食料品のほか衣料品、日用雑貨なども売っているし、テナントも何軒か入っているので大抵のものはそこで手に入れることができる。


 まず、食料品売り場の手前の雑貨売り場で練り歯磨きと歯ブラシを人数分買い、その後タオルを多めに買っておいた。ほかにティッシュペーパー、トイレットペーパーを大量に買っておいた。


 お菓子売り場に回って子どもたち用にお菓子を買ってやろうかと思ったが、歯磨きをしても虫歯になるものは虫歯になるのでお菓子は諦めた。



 俺自身のためには、缶ビールを箱買いしておいた。錬金工房内で加熱もできたし氷も作れるのだから、直接冷却も可能だろう。


 カートに商品を山積みにして、レジで支払いし、人目のないところまで移動してアイテムボックスに品物を収納しておいた。今回の買い物で財布の中身もほぼ空になった。電子マネーやカードは使わない現金主義なので、明日にでも銀行にいってある程度の現金を下ろしておこう。


 先立つ物も足りないし、今日はこんなところだな。


 スーパーのトイレの先の人目のない通路から転移しようと歩いていたら掲示板が立てかけてあり、そこに失踪中の3人の女子高生の顔写真などが貼りだされていた。顔写真と言っても写真をコピーしたものなのであまりいい画像ではなかった。


『さすがに失踪届が出るよな。女子高生が3人もいなくなれば大事件だ。この中に俺がいないのは幸か不幸か。

 3人の親御さんには気の毒だが、いらぬ疑いを持たれるから、俺が「娘さんの行方を知っていますよ」と、名乗り出ることもできない。そこは勘弁してくれ』


 3人の顔写真を後に、向うの屋敷の居間に転移した。スマホはアパートで充電器につなげたままだ。



 屋敷に帰った俺は、子どもたちを呼び集めて各自に練り歯磨きと歯ブラシを渡し、歯磨き講習会を実施した。


 子どもたちは練り歯磨きのミントかなにかの味に最初驚いていたが、何とか歯ブラシで歯を磨くことができるようになった。


 歯磨きを終えて口をゆすいだ子どもたちは盛んに、ハー、ハー、と息を吹き出して口の中の清涼感を味わっていた。


「朝起きた時と、寝る前に歯磨きすること。いいな」


「「はい!」」


「練り歯磨きが少なくなったら、なくなる前に言うんだぞ」


「「はい!」」


 相変わらず俺は子どもたちのお母ちゃんをしていた。そういえば、俺が料理をしてもいいかもと考えたこともあったが、冷静に考えて、冷凍食品と総菜ものでしか料理などしたことのない俺が挑戦するのは無理があるだろう。


 ということでまかないをなんとかしなければならないのだが、雇うとなると給金とか面倒なので、結局、子どもたちを買った奴隷商館に足を運び、料理ができて、子どもたちに優しく接することができそうな人物を購入することにした。そんな人物がいるかどうかは分からないが、いないこともないだろう。



「これはこれは、ゼンジロウさま。

 フッター・ロードでございます。今日はどういった奴隷をお探しでしょう?」


 俺が奴隷商会の玄関先に行くと、中から前回俺の対応をした店長代理が現れた。


 一度顔を出しただけなのによく俺の名前を覚えているものだ。商売人なら当たり前のスキルかも知れないが俺には無いスキルだ。


「料理ができて、子ども好きの人物が1人ほしいんだが」


「子ども好きかどうかは私自身確実に把握してるわけではありませんが、

 それらしい者を数人ご用意できますので、その中からお選びください」


 店長代理は、後に控えていた若造に指示し、若造は前回同様奥の方に駆けていった。


 勧められた丸机の前の椅子で待つことしばし。


 俺は特に若い女性とか美人を希望したわけではないのだが、若造が連れてきたのは若くて美人な3人の女性だ。3人とも子どもたちと違って貫頭衣を着ているわけでも裸足でもなくごく普通の格好をしていた。


 俺の場合は自分のことは棚に上げてルッキズムの傾向がかなり強いので、美人は大歓迎だ。俺の偏見かも知れないが、大抵の美人は心根が優しく人当たりがいい。見目麗みめうるわしければなさけがあるわけだ。


 3人が3人とも美人なので甲乙つけがたかったのだが、俺の好みで3人の中で一番小柄なリサという名前の女性を買うことにした。歳は20歳で黒髪を肩口で切りそろえた小顔の美人だ。


「ゼンジロウさま。今回も一応ご説明させていただきます。

 ご購入の奴隷ですが、借金奴隷の区分になっており、借金総額が金貨80枚、商業ギルドが彼女の借金を建て替えていますのでその保証料が金貨20枚です。

 彼女は金貨100枚分の仕事をした場合奴隷から解放されます。1カ月の返済相場は彼女の場合金貨2枚となっておりますので、50カ月の奴隷契約ということになります。

 契約期間が満了した場合、彼女は奴隷から解放されます。それ以降は一般雇用となるのは孤児奴隷が成人した場合と同じです。

 前回も申しましたが、奴隷は国外へは移動できません。国外へ奴隷を連れだそうとした場合、または連れ出した場合、厳しく罰せられます」


「その、国外へ連れ出せないというのはどういった理由からなんだい?」


「ゼンジロウさまに限ってはあり得ないでしょうが、国外においては、奴隷契約が十分果たされない可能性があるためにそういった決まりになっております」


 なるほど。


「また、彼女に限らず借金奴隷に対する性的な強要は犯罪となりますのでご注意ください。

 それで、彼女の値段ですが先程の金貨100枚プラス私共の経費として金貨50枚を頂きます」


 よく考えられたシステムだ。しかも妙なことは厳しく禁止されているわけか。俺としては妙な気を起こさなくて済む分ありがたい。その気になったとき用には、そういった場所・・があるのだろう。病気も俺にとっては怖くないので安心してそこを利用できる。


「了解した」


 金貨150枚を支店長代理に支払って俺は契約書と美人奴隷を手に入れた。


 子どもたちの時は手荷物などなかったが、これくらいの歳の女性だと手荷物があるようで、一度奥に引っ込んだ後荷物を持って彼女が出てきた。


 支店長代理と若造が頭を下げる中、俺は彼女リサを引き連れて奴隷商館を後にした。


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