ついに
………………………
………………………………………………
………………………………………………………………………沈黙だ。
僅かに開いた窓から、穏やかなそよ風が入ってくる。
流れ星が降り注ぐ天に浮かぶ満月が、世界を見下ろしながら淡い光を放ち、夜の帳が下りた街並みを微かに照らしている。
やっぱり、部屋の中は水を打ったようにとても静かだった。
ベッドの上に眠ている女の子たちの寝息だけが、夜のしじまを破り、世界を飾るように聞こえてくる。
場所は龍の王国だ
訳あってはぐれドラゴンとの戦争に巻き込まれることになった。
本当はこの時間では眠ているはずだが、何故か不安に襲われている。
遅かれ早かれ何が起こる。
と、俺の本能がそう教えてくれている。
いつ起こるか、どんなふうに起こるか……とりあえず俺たちがまだわからないことがいっぱいだ。
でも、何か確実に起こる。
ソファから上半身を起こし、女の子たちの寝息がするところに目をやる。
やはり気持ち良さそうに眠ている。
相当疲れているだろうな。
と、そう思い欠伸を噛み殺すと、次に手元に置いてある愛剣に目を向ける。
流石は魔剣。
傷といったものはひとつもない。
ふと、買ったあの日を思い出すと、クスッと笑わずにはいられない。
今日もいい働きを見せてくれるんだろうな。
と、そんなことを考えていると、手を伸ばし、剣を手に取る。
相変わらずの軽さだった。
するとまだ鞘に収まったまま、剣を後ろ腰を帯びると、目を閉じて、気配察知を発動する。
───そして待つこと1分。
結局何も感じ取らなかった。
察知妨害魔法でも知っているのか?
その可能性はある。
と、同時にない。
だったらやっぱ着くまで待つしかないんだ。
どのぐらい時間がかかるだろうな。
わかんないが、油断する訳にはいけない。
冷静になれ。
日和る余地なんてない。
冷静になれ……冷静になれ……冷静になれ──
目を閉じ、息を大きく吸い込むと、吐き捨てる。
それを何度も繰り返すと、再び目を開いた。
思わず『頭脳明晰』を発動したみたい。
今まで自動的に発動するかと思っていたが、違ったようだ。
だから明らかに強敵であろうモノと戦っていたら、恐怖を感じずにうまく立ち向かっていたんだろう。
無意識に『頭脳明晰』を発動しているから。
なんという素敵なスキルだ。
もしこのスキルがなければなにがどうなっているか分からない。
とりあえず取得してよかった、って感じで。
────さてと、もうすぐだな。
と、そう思い、ソファから立ち上がって伸びをする。
今何時だろう?
わからないが、結構遅いともうわかっている。
恐らく2時3時といったところだろう。
まさか、こんな夜遅くに襲ってくるとはな。
と、そんなことを思った瞬間、どかん!!!
と遠くから爆発みたいな音が聞こえた。
……いよいよ着いたな、はぐれドラゴン。
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