武器、ゲットだぜ

冒険者ギルドを出て、地図を見ながらしばらく通りを歩いていくと、剣と盾という、わかりやすいロゴマークの看板が見えてきた。


店名は【カジのインベントリー】。


随分とベーシックなだな。


入口の扉を開くと、カランカランと扉に取り付けられた小さな鐘が鳴る。


その音に反応したか、店の奥からのっそりと中年男が現れた。


中年男を一言を表すと、デカい。

それしか言いようがない。


「らっしゃい。なにをお探しで?」


どうやらこのおじさんは店主だったようだ。

でもやっぱ大きい。


明らかに俺より身長が高い。

それに、筋肉がムキムキだ。


まじで怖い。


「えっと、新しい武器を探してるんだが、ちょっと店内を見させてもらえる?」


「あ、どうぞどうぞ。お気に入りのを見つけたら声をかけてね」


俺がそう説明すると、おじさんはにこやかに答えてくれた。

プロレスみたいな身体をしているというものの、なかなかいい人みたいだな。


よかった。


店内を見渡すと至る所に武器が展示してある。

種類も豊富で、剣から槍、弓、斧、鞭、様々な武器が所狭しと並んでいる。


どれがいいかな。


とは言っても、やっぱり考えれば、どんな武器を使っても俺の魔法と相性がよいすぎ。


剣はともかく、例えば弓矢とかも俺の魔法と相まって意外と行けそうだな。

あと鞭も。


弓矢は弓自体を付与できるし。

それに弓を媒体にして矢に魔力を流通することもできる。


鞭は剣みたいに一定の魔力流入を維持することだけで簡単に魔力で付与出来るから。

それは斧も槍も、金槌もクロスボウも同じ。


うぐぐぐ。


困るなぁ。


と、まぁ、しばらく展示してある武器を見て回るが、目を引く武器を見つけなくて一旦諦めようとそう決めた、その瞬間だった。


店の奥深くから、魔力を感じた。

なんかちょっと不気味な感じだった。


しかし好奇心に負けて、俺はその魔力を感じ取りながら店の奥深くに向かった。


そしてしばらく店内を見回すと、目を引かれる物が俺の視界に入った。


壁に掛けてあった、黒鉄の日本刀だ。


何この日本刀?

めっちゃカッコイイんだけど?

それにめっちゃくちゃ強そうだな。


魔力を感じられるってことはこれってもしかして【魔剣】なのか?


考えると、確認する為に【鑑定】を発動する。


─────────────────

黒薔薇の刀


種類:刀/魔剣

タイプ:斬撃/刺突

特性:ノーマル・ダーク


全体的攻撃力:855(+20)

物理攻撃力:555(+ 10)

魔法攻撃力:300(+ 10)

耐久性:200(+ 5)


特殊能力:生命狩り

攻撃ごとに敵の生命力を奪い取り、一時的に全体攻撃力を上げる、黒薔薇の刀の独特なスキルだ。


強化素材

【エボニー鉱石‪ ✕‬5個】

【ランドドラゴンの皮 ✕‬3つ】

【黒ずくめのスライムのゼリー ✕‬10】

【ダーク・ナイトの心臓 ✕‬1個】

【10,000E】

─────────────────



やっぱり魔剣だった。

それに物理攻撃力と魔法攻撃力がマジでくそ高いな。


そう、刀に魅入っていると、後ろから声が聞こえた。


「あ。見つけちまったなぁ」


刀から目を離すと、後ろに振り向く。

そこに立っているのは店主だった。


見つけちまった?

どういう意味?


いや、そんなことより値段。

値段を聞きたい。


「これ、いくらですか?」


俺の声に、日本刀から俺に店主さんがひょこっと首を出す。


「これ、買うんか?」


買うに決まっている。


「ダメですか?」


俺の質問に、店主が首を振る。


「いや。むしろ買ってくれると嬉しいんだけど」


そうか?

じゃあ問題ないんだろ。


「けどよ」


と、ここで、店主は真剣な顔をして俺を見つめる。


「この剣って、呪われている」


「呪われている?」


そう、聞き返すと、店主は頷いた。


「うん。感じるだろ? この剣を包んでいる禍々しいオーラを?」


魔力のことですか?


「確かにこの剣が放っている不気味な魔力を感じられるが、それがどうしたん?」


「昔さ、この地域を襲った魔王がいてさ。どうやらこの剣を使っていたらしいぞ。剣をあまりにも愛しすぎて勇者ジョンに殺される前に呪いをかけたと言われている。その呪いってのは使えば使うほどどんどんその使い手の人命を奪い取るという呪いだったらしい」


いや使い手の人命を奪い取るって違くないか?

確かにその能力はあるが、使い手の人命じゃなく敵の生命力を奪い取るって書いてあるぞ?


とは言っても、さすがにそれを言えば信じられないよな。


まあ、それでも。

この刀が欲しい。


「いくら?」


と、俺がもう一度聞くと、店主が諦めたかのように深く溜息をついた。


「それでも買うんかい。まあいいさ。14000エリスをくれたらやるよ」


14000エリス?!?!


15000エリスしか持っていないんだけど?!?!


「14000エリス!? 高くない?」


そう言うと、店主はにこにこする。


「14000エリスは半値だよ?」


14000エリスは半値かーい!?


「いや、どう考えても無茶すぎるよね? こ【呪われた】の武器をあんな高値で売るのって」


そう、【呪われた】を強調して言う。


「ビジネスはビジネスだ」


……コノヤロー。


まあでも、「あれ」をまだ持っているからいいんだけど。


「わかったよわかったよ。これをもらう」


「そりゃどうも」


「あと、これもらったんだけどまだ有効なのか?」


そう言うと、ポケットからアンズがくれたカードを取り出し、店主に見せる。


店主はそのカードを見ると、大きく目を見開いた。


「これ………もしかしてアンズに会ったの?」


店主が聞くと、俺が頷いた。


「うん。彼とその護衛を森狼(フォレストウルフ)から助けたお礼にこのカードをくれたよ。そのカードを店長に見せたら武器であろうが服装なろうが全ての物を半値で買えるようになるぞ、なんて言って」


俺が説明すると、店主は溜息をついた。


「そうか。じゃあこの剣、5000エリスでお前さんにやる」


14000エリスから5000エリスに?

めっちゃ値下げされたんだけど?

もしかしてアンズって意外と有名な人?


ありがとうよ、マジでアンズさん!

これを一生忘れやしない!


インベントリーから5000エリスを取り出し、店主に手渡す。

愚痴りながらその5000エリスを手に取る店主。


「毎度あり。で、防具はどうする? もしかして、そのままで行くつもり?」


確かに。そろそろこの服装を変えないとな。

防具じゃなく今服が欲しいんだ。


「そうだな。まあ、服屋に行ってとりあえず着る物を買いたいな、って思っててさ。防具はあとでもっとお金を稼いだら戻って買うと思うよ」


「そうか?」


「うん。そうだな」


「まあ、いっぱい稼いだらまた来るがいいな。来店待っているよ」


そう言って豪快に笑う店主。


やっぱいい人だな。


でもここで俺の買い物は終わりか?


次に向かうのは、やっぱ服屋さん。


と、それを決めると、刀を鞘に収めて武器屋を出る。

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