第7話


「せっかく盗り返してもらったところ悪いけど、今すぐにはお礼が出来ないな」

「いいよいいよ。お節介だったみたいだしな」

「本当だよまったく……。彼はこの後、自分の技術を成果を確かめ、その折に騙されたと憤慨する。それを想像するだけでも楽しかったというのに……」


 本当に趣味悪いなコイツ。


「まぁ、そうは言っても善意の愚行……もとい恩に報いる必要はある。たとえそれが誰のためにならなくても、外ならぬボクのためにとやってくれた事だ。それなりには評価し、しかるべき報酬を与えないとね」

「いいって。そういう言い方されて金銭まで貰うとか罪悪感が半端ない」

「ハハハ」


 軽く笑ってから、彼女は手を差し出す。


「ボクの名前は【エスト】。この街に住んでいるモノだ」

「あぁ、俺はピーター。こっちの可愛いのはアリス」


 自己紹介を軽くしてから握手に応じる。


「ピーターに……アリスか。うん。覚えたよ」


 そう言うと、エストは手を離して歩き始め、俺の横を素通りする。

 あそこまで嫌味を言っておいて自己紹介して終わり?


「え、報酬云々は?」


 思わず出た言葉にエストは振り返り、気味の悪い笑みを浮かべた。


「また会えた時にちゃんとあげるから。期待していると良い」

「ったく……。わぁったよ」


 要するに踏み倒しですね。

 わかります。

 俺の返答にエストはフフッと微笑んだだけで歩き出す。

 すると、アリスが手を引っ張ってきた。


「いいんですか?」

「金が欲しくて盗り返したわけじゃないしな。別にいいよ」

「なんていうか」

「ん?」


 アリスはもう姿の見えなくなったエストの方を見て、余計な一言を放つ。


「ピーターみたいに変な人でしたね」

「み・た・い・に~?」


 俺はアリスと繋いでいた手をバシッと離す。

 そんな俺の行動に驚いて目を丸くするアリスに対し、俺は公衆の面前で両わき腹をくすぐった。


「キャハハハ!!!やめて!やめてください!キャハハハハ!」

「俺は変な人だからな。謝っても許さない」

「ごめんなさい!ごめんなさいィィィ!キャハハハハハハ!」


 ここでワンポイントアドバイス。

 アリスはくすぐり攻撃に弱い。

 周りの人たちに変な目で見られながらも、俺らの奇行は五分くらい続いた。

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