第2話


「ふぅ、何とかなったな」

「え、えぇ……」


 無事に検問を通り、門の傍の広場で馬車を停めてホッと一息ついた。

 まぁ、マットは喜んでいいのか、悪いのか微妙な表情を浮かべているけど。

 俺は俺で検問中、ずっとドキドキしていた。

 アリスにかけている魔術は初めて使うモンだったし、アリスは緊張でちょっと口数が少なくなってたし、見つかった時に逃げるための手段がいくつ通用するかわかんなかったし。

 ふぅ、何にも起こらなくて良かった良かった。


「さて。マットの護衛はどこまでやればいい?」

「あぁ、そうですね。街には入れましたし、護衛はここまでで十分です。っと、少々お待ちください」


 気を取り直して、マットは報酬を用意する。

 そして、わざわざ麻袋に入れて渡して来た。


「裸のままで良かったのに」

「は?!」

「あ、いや、金貨をわざわざ袋に入れて渡さなくてもさ」

「あ、あぁ……。そういう意味ですか」


 一瞬、マットがものすごく驚いてたけど、俺の言葉は一体どういう風に訳されていたんだろうか……。


「んじゃあ、ここで一旦お別れだな」

「そうですね」

「マット、ありがとうございました」

「いえいえ。お礼を言うのはこちらの方ですよアリスさん。皆さん、護衛任務お疲れ様でした」


 深々と礼を言うアリスに同じように頭を下げるマット。

 不思議な光景だな。


「マットさん、この後は商会へ行くんですよね?」

「え?あ、はい。そのつもりですが」

「ピーターさん。ボクも知り合いのところに顔を出そうと思っているんですけど、ここで一旦分かれても大丈夫ですか?」

「あぁ、そりゃあ構わないけど」


 知り合いに会うだけなら一緒に行ってもいいけど……。

 わざわざこう言うって事はついて来てほしくは無いんだろうな。


「一応、集合場所は決めておかないとな」

「宿であれば、僕の方で手配しますよ」

「いいのか?んな、世話になって」

「構いませんよ。紹介するのは知り合いの宿ですし」

「なるほどね。場所は?」

「えっと……」


 懐から地図を出し、広げようとしていたので俺はASDで地図を表示する。


「ほれ。現在地はこの赤丸のとこ」


 ASDを見せると、マットは何とも言えない表情で画面を見つめていた。


「本当にピーター殿のソレは反則級の道具ですね」

「今更どうした?」

「あまり見せびらかさない方がよろしいかと」

「見せびらかしているつもりは無い。っつーか、マットにはもう見せてるし別にいいだろ?」


 そう言うと、マットは崩れた表情を立て直して、指をさす。


「この大通りをまっすぐ行って」

「ふむふむ」


 地図の表示範囲を俺が移動させながら、目的の宿を教えてもらう。


「よし。んじゃあ、ティリス。【ブライトグリーン】って宿で集合な」

「わかりました」

「ティリスさんも宿泊はそこで構いませんか?」

「あ、ボクは多分、これから会う相手が帰してくれないと思うので、明日の朝にその宿に向かいます」


 帰してくれない?


「え、ティリス誰に捕まるの?」

「えっと……、幼馴染ですね」


 そりゃまた、物騒な幼馴染だこと。

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