第6話
「さて、では始めますか」
「いやいやいや!待って待って待って」
坑道入り口から少し離れたところにある広場にて、マットが木剣を手にしている。
俺はその対戦相手として勝手にエントリーされており、戸惑っていた。
「魔法の使用は無しです。ピーター殿か私が負けを認めれば終わり。互いの力量を測るだけの手合わせなので寸止めでお願いします。流石に真剣で斬られたくはないので」
「いやいやいや!待って待って待って。必要?ねぇ、これ必要?」
「必要ですよ。このパーティで年長者となる我々がどの程度強いのかお互いに把握したいでしょう?」
「いやぁ、マットは強いから必要ないと思うなぁ」
どう見ても他の商人よりも筋肉質なんだもん。
鎧こそ着ていないモノの腰には剣を下げてるし、その剣も使い込まれている感じがする。
それで弱いとかはったりが過ぎるだろう。
「アハハ。これでも護衛にかけるお金をケチるために鍛えてますからね。そこら辺の兵士にも負けないと自負していますよ」
兵士よりも強いってヤバイじゃん。
どんだけ鍛えてんだよこのオッサン。
「年長者っつってもそっちのが年上だろ?俺はどっちが強いとかには興味ないし。いいよ、マットの方が強くて」
「そういう決めつけは良くないですね。私はまだ26歳なので確かに年上ですが」
「え?」
「「え?」」
マットの声に俺が驚き、俺が驚いた声にアリスとティリスが驚いた。
2コンボ。
「えっと……ピーターさんっておいくつなんですか?」
「この間誕生日が過ぎたから28歳児」
「え?20代前半かと思ってました」
アリスの言葉に皆が一様に頷く。
あれか?日本人は若く見られがちとか言うあれか?
「じゃあ、アリスとティリスはいくつなんだよ!」
「公の場で女性に年齢を尋ねるのは失礼というものですよ。見た目に幼さが残っていてもそこは礼儀です」
「マジレスしないでマット」
そんな呆れた声の後にティリスが手を挙げる。
「ボクは今年で14歳になります!」
つまりは現在13歳。
「私は今年で……きゅ、19歳です」
90台なのか?
アリスは90歳くらいなのか?
「とまぁ、長く連れ添った友人でも知らないことがあるとこうなります。危険地帯で咄嗟に思考が停止するのはよろしくありませんので。魔法は抜きにしますが、体術のレベルが分かっているだけでも十分でしょう?」
「それでも坑道に入る前から疲れたくない」
「では、行きますッ……よッ!」
他人の言う事を聞いてくれない武闘派商人マットが襲い掛かってきた。
倒したら金ぶんどるぞ。
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