第3話
「なんで通行止めなんだよッ!」
「ですから、坑道内で落盤事故が起きたんです。そのせいで東西連絡路が封鎖されていまして。今は復旧作業中です」
「いつ終わるんだ!?」
「だいぶ広範囲が崩れたようで、復旧にはいましばらく時間が」
「ッんだよ!」
イライラとしながら、細身のオッサンが兵士たちの元から去っていく。
気になって声のする方に来てみたけど、坑道の前にも荷馬車が数台停まっていた。
こちらの荷車は露店を開いていない。
「すみません」
細身のオッサンと入れ替わりで来たのはがっしりとした体格のオッサン。
細身の方とは違って、品があるような佇まいで同じ兵士に質問をした。
「今来たばかりで状況がわかっていないのですが、坑道内で事故があったと?」
「はい。現在、復旧作業中です」
「坑道自体はもう使われていませんし、連絡路となったルートはだいぶ頑丈に作られていたと認識しているのですが」
「その通りです。しかし、三日前の謎の大規模爆発により、山道の一部と坑道内に影響が出て」
うん?
兵士の説明を聞いた俺ら三人は思わず互いの顔を見合わせる。
もしかしなくても俺らのせい?
いや、ハンプティ・ダンプティ兄弟のせいだ。
「そうでしたか……。急ぎの用があり、通過したかったのですが……。旧坑道も入れないくらいですか?」
「旧坑道は入れますが、おススメしません。中が複雑で把握している者がこの場にはいません。それに魔物もどこからか入り込んでいますし、旧坑道ルートが塞がれていないという保証もありませんので」
「確かに……。わかりました。ありがとうございます」
体格のいいオッサンは兵士に僅かな金を渡すと、悩む様にアゴを触りながらこちらへと戻ってくる。
「山道も通れないとすると……うぅむ。どうしたものか」
歩きながら考えていることが口から漏れ出る品の良いオッサン。
俺ら三人は申し訳ない気持ちのまま、顔を見合わせてから同時に頷いた。
「あ、あの!」
「ん?」
品の良いオッサンがティリスの声に振り返り、目線を合わせるようにしゃがみ込む。
「ボク、どうしたんだい?」
「お急ぎなんですか?」
「ん?あぁ、まぁね。首都への届け物があって……。キミたちも連絡路を使えず足止めされている感じかな?」
「えっと……、どのルートで東側に行くつもりですか?」
「僕かい?そうだな。一先ずは周りの同業者に聞いてからだ。情報が少なすぎてどのルートが一番早く着けるかはわからないからね」
「アンタさっき旧坑道ルート使おうとしたけど、入れんのか?」
俺が話に割って入ると、オッサンは立ち上がる。
「貴方は?」
「俺はピーター。こいつがティリスで、あっちのカラフルなのはアリス」
「誰のせいですか」
アリスは角隠しのためにカラフルなビビットカラーの防災頭巾を着用中。
そのおかげで良い意味でも、悪い意味でも視線を集めている。
「あぁ、申し遅れました。【マシュー・ハットメイカー】です。マットと呼んでくだされば」
「よろしくマット」
「はい」
俺が差し出した手にためらいなく応えるマット。
握った手は少しゴツく、商人と言うよりは戦士にも思えた。
そういえば、腰にも剣があるな。
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