ハンプティ・ダンプティ兄弟 3
「どうする?キョウダイ。次で最後だ」
もうダンプティの魔力は《超遠距離爆撃(ミーティア)》一回分ジャスト。
追加の《貫通力強化(ペネトレイター)》は使えない。
「ワレが残りの魔力を全て《外部貫通力強化(ペネトレイター・アウトサイド)》に注ぐ。照準を一発目と同じところに合わせたら教えろ」
「わかった」
そうして十分に時間をかけて照準を合わせる。
「準備が出来たぞ。キョウダイ」
「よし」
ハンプティは三人がまだあそこにいることを確認してから、一旦すべての強化術を解除。
それと同時にダンプティが《超遠距離爆撃(ミーティア)》を起動し、遅れてハンプティが《外部貫通力強化(ペネトレイター・アウトサイド)》をかける。
殺し屋家業を始めて、初めての三発目。
それがまさか“人間相手”に使うとは思いもしなかった。
二人の中にあるのは純粋な敬意。
あの防御魔術を発動しているであろうあの男に敬意を向け、全力を出した。
「これで終わりだ」
ハンプティの残存魔力を全て費やした《超遠距離爆撃(ミーティア)》はそれまでとは異なる輝きを見せ、巨大な障壁へと向かう。
そして……、展開されていた障壁に激突し、白い閃光がカッと広がった。
続いて腹に響くような重低音が広がり、同時に障壁はガラガラと音を立てて崩れ去っていく。
障壁に刺さっていた一発目、地面に撃ちつけられた二発目も次々に誘爆し、轟音が鳴り響き、人為的な地震が発生し、爆炎が周囲を包みこむ。
地面は煮えたぎり、沸き上がる大地が煙を吐く。熱が引くのを待つまでもない。
ハンプティ・ダンプティ兄弟は三人の討伐を確信していた。
先ほどまでとの結果の違いには当然理由がある。
それはハンプティの《貫通力強化(ペネトレイター)》による強化率だ。
ダンプティの使うソレとは魔力効率も強化率も違う。
それの最大強化を《超遠距離爆撃(ミーティア)》に注いだ結果、ダンプティと折半して強化していた時よりも威力が向上し、更に意図せず術が変質を起こした。
確かに、魔術封印を突破するようにハンプティが仕掛けたモノだが、他者の術を変質させるというのは容易な事ではない。
当然、ピーターもハンプティ・ダンプティ兄弟も予期できていないし、術の変質には気づかなかった。
そんな予想外に変質した《超遠距離爆撃(ミーティア)・改》は障壁表面に展開されている魔術封印を完全に無視して障壁を破壊したのだ。
ピーターの誤算はこの一点だった。
予期できぬ彼らの術の変質。
この術の変質によってピーターがやろうとしていた反撃の芽まで知らぬ間に摘み取られていた。
唯一の救いは、この三発目の《超遠距離爆撃(ミーティア)・改》の存在に誰も気づかなかった事だろう。
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