第3話


「えぇ!?だってだってだって!ちゃんと女の子ですよ!?」


 アリスが困惑するのも無理はない。

 ティリスは上から下まで女性用の旅衣装を着ている。

 顔も童顔で可愛らしく、まつげも長く、目もクリクリと大きいため女児と言っても見間違えるだろう。


「落ち着くのですエロ娘」

「誰がエロ娘ですか!?」


 お前だお前。


「だって、異性と一緒にお風呂入るのが日常だったんだろ?顔を赤らめてウキウキ顔だったじゃないか。風呂の中でこんな小さい男の子に何をするつもりだったんだ?自称、大人の女」

「その言い方だと本当に私が小さい男の子を食い物にする変態みたいじゃないですか!」

「現状、俺らの認識はそのまんまなんだが」


 嘘でしょ!?と、ティリスに視線を送るが、当のティリスはアリスの眼光に恐れをなして顔を逸らしていた。


「まぁ、女に間違えるのも無理はないけど……。っつーか、なんでティリスは女物の服着てんの?女装趣味男子?」


 俺の疑問にティリスが今度は大声を出す。


「違いますよ!?」


 そして、事情の説明へと移る。


「最初はちゃんと男の恰好でした!途中で商人の馬車に乗せてもらった時に派手に汚れることがあって、その商人の方から着替えを貰ったんです!」

「それがその服?」

「そうです!」

「いや、着る前に気づけ……。むしろ、着た時に指摘しろよ」

「言ったんですよ!けど、男装していると盗賊に問答無用で殺されるかもしれないって言われて!」

「まぁ、女だったら男よりも生き延びる確率高くなるしな」


 何をされるかは置いといて。


「だから……仕方がなく」


 仕方がなく女装するってあんま無いと思う。

 罰ゲームならしょうがないけどさ。


「お、男の人が」


 アリスがここで復帰。

 恥ずかしそうに顔を歪ませたまま、声を震わせる。


「男の人がこんなに可愛いわけないじゃないですか。金髪でウェーブかかってて、青くて澄んだ目をしていて」

「それだけで女と思うなよ。そういう男だって探せばいるぞ」


 俺のツッコミを意に介さず、アリスはなおも言葉を続けた。


「女の子の格好しても似合うだなんて!声だって全然低くありませんし!」

「声変わり前なんだろ」

「うっ……」


 うん?

 変な声が聞こえてきたのでそっちを見ると、ティリスが顔を逸らしていた。


「こ、これでも低くなった方なんですよ!?」


 そして、今度はティリスが腹の底から叫んだ。

 それは女の子が大声を出したのとほとんど変わらない高さだった。

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