第9話


 宴会を終え、俺らは村の食料を少し分けてもらい、この辺に生えているという野草などの情報を手に入れた。

 ちなみに、アリスの衣服はスウェットのまま。

 理由は汚い服しかなかったから。


 そして明け方に出発。

 村人からは惜しまれたが、やることがあると嘘を吐いて俺らは旅立った。


「あの……ピーター」

「あぁ、なんなんだ?アイツ」


 俺らが今気にしているのはあの村で出会った旅人だ。

 なぜか俺らが出立するタイミングで村を出て、俺らに付いて来ている。

 尾行なんて高尚なもんじゃない。

 普通に一緒に歩いてついて来ている。


「なぁ、アンタ」

「はい!」


 旅人に話しかけるとちょっと嬉しそうに返事をした。


「なんでついてくるんだ?行き先が同じとかじゃないよな?」

「いえ、面白い方だなぁって思って」


 んな理由で付いて来たのか。


「事情はよく知らないけど、自分の旅があるならそっちを優先した方が良いぞ」

「いえいえ。ボクは旅人ですけど当てのない気ままな旅なので」

「だからって至近距離でのストーキングは許されないぞ」

「そういうつもりは無かったんですけど」


 昨日の宴会の時にも見たが、だいぶ可愛い感じの顔立ちだ。

 金色の髪は少しくすんで見えるが、青く透き通った瞳には強い意志が感じられる。

 体も小さく、腕も細いけど一人で旅が成立していたって事はこいつも魔法使いなんだろう。


「マジでついてくるのか?はっきり言って俺らも行き先不定の道行きだぞ?」

「あれ?でもさっき用事があるって」

「そうでも言わないとアイツらあの手この手で引き留めるだろ」

「アハハ。そういう理由だったんですね」


 旅人は納得した表情を浮かべてから、渾身の笑顔を浮かべる。


「ボクは【ティリス】って言います。旅は慣れているので、さっき村の人に教えてもらってたくらいの食べられる野草とかは知ってます。あと、料理の方も簡単にですけどできます。どうですか?旅の仲間に加えて頂けませんか?」


 ティリスは巧妙に俺らの弱点を突いて来た。

 相談の意味も含めてアリスと目を合わせると、アリスはニコリと口を開く。


「私も付いて来ている身の上ですので、ピーターに任せますよ」

「任せちゃいますか……」


 んじゃあ、いっか。

 パーティが増えるのもRPGの醍醐味だしな。


「よっし。んじゃあ、当面の飯炊き係としてお前を仲間にしてやろう。俺はピーター」

「私はアリスです」

「よろしくな」


 俺は手を差し伸べる。


「よろしくおねがいします」


 そして、アリスは律義に礼をしてしまった。

 パサッとフードが外れ、隠されていた角が露わになる。


「え?」


 新たに加わった旅の仲間はその角を見て、ちょっと驚いていた。

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