第6話


「ほらほらぁ~。頑張って奉仕しないとあんな風になっちゃうよ~」


 村役場に入ると、大広間っぽいところで数人の盗賊たちが女たちとヤッていた。

 匂いがスゲェ。


「あぁ?」


 俺の存在に気づいた盗賊が不機嫌そうに声を出す。

 すると、他の盗賊も俺を見て顔を歪ませた。


「誰だ?お前」

「見張りはどうした?」

「先に逝ったよ」


 俺がそう答えると、盗賊たちは女の中に入れていた自分のブツを抜き取り、近くに置いてあった剣を手にする。


「ヒーローごっこか?」

「言っとくが、死にたくなけりゃ今すぐ帰んな」

「そうそう……。外の奴らは下っ端だけど」


 中にいた六人のうち、三人が俺に向けて手をかざす。


「オレらは魔法使いだ」

「「「《下級炎弾魔法(ファイアボール)》」」」


 手の先から炎の球が生成され、それを俺に向けて放つ。

 炎の塊は僅かに弧を描き、わりと正確に俺の体へと向かってきた。


「ふぅん」


 そんな声と共に刀を振るい、《下級炎弾魔術(ファイアボール)》を掻き消す。

 そして、同じように手をかざし、同じ術名を唱える。


「《下級炎弾魔術(ファイアボール)》」


 手の平の先に出現した炎の球は盗賊たちのそれに比べて二回りほど小さい。

 そんな小さな火球を見て、盗賊たちは笑い出した。


「ハハハハ!お前も魔法使いかよ!」

「才能はどうあれ、それじゃあ見張りの奴らもやられるか」

「今ならまだ見逃じッ……!」


 盗賊の一人が声を出している途中に、俺は魔術を放つ。

 その速度は《射出》系の魔術に近く、弧を描かずに直進して盗賊の顔に命中。

 その凝縮された温度によって、皮膚がただれ、喉が癒着し、空気を肺に送り込めなくなってびくびくと体を震わせてから絶命した。


 役場の中を静寂が支配する。


「そっちは優しい奴らが多いんだな。悪いけど、俺は優しくないんだ」


 そう言って、今度はまともに魔術を放つ。

 “まともに”というのは“術名をわざわざ唱えない”ということだ。


 次々に《下級炎弾魔術(ファイアボール)》を発動させ、棒立ち状態の盗賊の頭を丁寧に一つずつ焼いていった。

 女たちは呆然とそれを見つめ、傍らに落ちる盗賊を見て「ヒィッ」と声を上げている。


「こんなもんか」


 全部で六人。

 この場にいるすべての盗賊の命が儚く消えたところで、俺は近くにいた裸の女に向けて口を開く。


「なぁ、盗賊はこれで全部か?」

「い、いえ……。奥の村長室にも数人」


 女は呆然としたまま答える。


「そっか。ありがとな」


 俺が村長室へと歩き始めると、段々と自分たちが助かったという現実に気づいたのか女たちが立ち上がった。

 そして、奥の方にいた数人が何故か俺の方へと走ってくる。


「「ありがとうございます!」」

「近づくな」


 なんか抱き着いて来そうな流れだったので、俺は二人の女の頭を掴んで俺の体に近づかないようにする。


「お前ら抱き着くなら体を拭くとかしてくれ。精液まみれで汚いし、触りたくない」

「ちょっと!ピーター!」

「いや、だって本当だろ?」

「それでも言い方があるでしょう」

「そうか?事実だと思うけどな」

「無理やり犯されていたんですよ?もう少し労わってあげないと」

「逆だろ」

「「「え?」」」


 この時ばかりはアリスと女たちの声が重なる。


「辛い事なのはわかるが、ここで知らん奴に慰めてもらおうとすんな。俺はそんな心の広い男じゃない」

「なにもそういう言い方をしなくても」

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