第199話 永劫回帰のキルシウム7

 都市の上空で浮遊する球体。周囲の岩などを使い作られた物体のようだが、その表面はまるで磨かれたかのように光沢を放っている。何かされても面倒だと考え、腰を少し落としそのまま球体へ向かって突進した。



 拳を振い球体が砕ける。込めた魔力量を考えれば当然の結果だと考えたが、それでも何か手ごたえがおかしい。砕けた破片はそのまま地面に落ちて――沈んでいった。


「なんだ……?」



 十数個に割れた破片たちはまるで海に落ちたかのように地面に当たらずそのまま地中へ沈んでいく。いやよくみればそれだけじゃない。周囲の建物も、まるで沈んでいくように落ちていく。それを怪訝な面持ちで俺は見ていた。



「ユーラの姿が見当たらないか」



 砕いた球体の中に人の姿はなかった。ならば先ほどのオグンと同様に自身の身体を変化させていたと考えるべきだ。だがこうして地面に潜られると一気に面倒になる。



「流石にこの周囲を破壊するわけにはいかない分、面倒になったか」



 恐らくこの都市ごと破壊するレベルの攻撃を地面に向ければオプスを炙り出す事は出来るかもしれない。だが流石にそれは危険すぎる。消えた街の人々もどうなっているか不透明なこの状況の中で状況を悪化させたくない。


「――仕方ない。力業だけど出てきてもらうぞ」


 

 方法は一緒だ。俺の魔力を出来るだけ本気で放つ。魔力体の大精霊には強い影響が出るはずだし、ついでに本来の目的の魔人の行方も分かるかもしれない。もっともその他の人々の影響も神する必要があるため、あまり長時間は避けた方がいいか。



「はあッ!!」



 逃げ場なく空間をすべて埋め尽くすように魔力を放出する。結界内をすべてを完全に多いその手ごたえから1つミスに気付いた。



「ちッ。結界の隙間を抜けたか」



 俺の結界は覆っていない。今の魔力の反応から見て、オプスは地面を潜ることで結界を抜けているのは間違いない。

 少し考え、覚悟を決めた。結界を消し去り、都市全土を覆うようにさらに魔力を広げた。すると都市のはずれ、岩山方向に反応を感知した。俺は魔力をすぐに抑え感知した場所へ移動する。そうして俺がたどり着く前にオプスの魔力が凄まじい速さで広がっていくのを感じた。



「何をするつもり――まさか」



 キルシウムを囲む岩山を見る。そしてそこにまるで血液のように流れ込んでいく大精霊の魔力。そこから推察するのは簡単だ。一瞬バカげているかとも思ったが十分可能な魔力量を保持しているのだ不可能と断ずるのは早計過ぎる。



 地響きがする。凄まじい量の土煙が立ちのぼり、その中で都市を囲むようにそびえていた岩山が動き始めた。硬い岩肌が流動していき、形を成していく。

 日を遮るように立ち上がっているそれを見て流石の俺も冷や汗をかいた。それなりに長い間この世界で勇者として戦った中で、当然巨大な生物と戦う機会もあった。それこそ以前戦った天龍はその最たる大きさだったと思う。しかしだ。




「――ここまで巨大なゴーレムは見た事ないな」



 そびえたつ巨人。それが2体。造形はどれも同じだが問題はその大きさだ。地球で何度か見かけた東京タワーくらいの大きなのゴーレム。ただ歩くだけで充分脅威となりえる存在。そんなゴーレムが俺を見下ろしていた。

 




ーーーー

想像以上に仕事が立て込んでおり、予定していた文字数に達しておらず申し訳ないです。

何も投稿しないよりはと考え、区切りの良い所で一度上げさせていただきます。

本当に申し訳ありません。

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