第21話


「なるほど…つまり君たちはエルキアの王女エレナによってこの世界に召喚され…挙げ句の果てに放逐されたと、要はそういうことじゃな」


俺と上原の話を、シエルがそんなふうに総括する。


「そ、そうなんです!」


「だから、私たち…なんとか人のいる場所にと思ってここまで来て…」


「ふむふむ…それはさぞかし辛かったろう」


シエルは俺たちに同情するような顔になる。


と、横から別のエルフが口を挟んできた。


「お言葉ですが、族長。この者たちの主張が真実である保証はどこにもありません」


「そうです。我らを油断させるための作戦とも限りません」


「同情の余地には値しない。すぐに殺してしまいましょう」


殺す。


そんな単語が飛び出てきて、ゾクリと背筋を寒いものが走り抜ける。


だが、シエルはそんなエルフたちの意見に、首を振った。


「殺す必要などない。この者たちの言っていることはおそらく本当じゃ」


「ぞ、族長…!?」


「失礼ですが…どうしてそのようなことがお分かりになるのですか…?」


「この者たちのステータスを確認したからじゃ」


「「「…!?」」」


エルフたちが大きく目を見開く。


シエルは堂々たる口調で言った。


「私の鑑定魔法で見たところ、両人の名前は、この世界の住人のものではなかった。また、異世界人の特徴であるスキルもそれぞれ保有しておる。少なくとも、二人が転移してきた異世界人であることは事実じゃ」


「なるほど…」


「それなら確実だ…」


「族長の鑑定なら信用できる…」


シエルの言葉に、ほとんどのエルフは納得したようだ。


「では、族長。改めて、このものたちの処分をお聞かせください。村の外への追放ですか?」


「いいや、せっかく命からがらここまで辿り着いたのじゃ。追い出すのは気の毒だろう。何日か泊めてやることにしよう」


「「…!」」


シエルの言葉に、俺も上原も顔を見合わせる。


助かった。


この幼女エルフには感謝しかない。


「しかし、族長…たとえ異世界人であるとはいえ、我らに牙を剥かないとは限らず…」


「ふむ。そんなに心配か。ならばこの者たちの面倒は責任を持って私がみるとしよう」


「ぞ、族長自ら…!?」


「ああ。異世界人と会ったのは久しぶりだからな。色々話したいこともある…それに…」


シエルがチラリとこちらを見て、目を細めた。


「異世界人は元来、強力なスキルを持つことで知られている。ともすれば…両人はこの村の英雄になるやもしれぬぞ」


シエルはニヤリと笑い、そんなことを言ったのだった。



それから数分後。


縄を解かれた俺と上原は、木の上にあるシエルの家へと招かれた。


「ここが私の部屋じゃ。二人とも、ゆったりと寛いでくれ。安心しろ。君らに悪意がないのはわかる。もう縄で縛ったりなどせんよ」


「ありがとうございます」


寛大な処置に、上原がペコリと頭を下げる。


「感謝します…それで、ええと…」


俺も上原に続いてお礼を言いつつ、シエルに尋ねる。


「一ついいでしょうか」


「なんじゃ?なんでも聞いていいぞ」


「あの、さっきの話…俺たちが英雄になるかもしれないって、一体どういうことです?」


「ああ。そのことか。ふむ、後でもいいと思ったが、せっかくだ。今全部話してしまおうか」


シエルが真剣な表情になって俺たちに語り出す。


「英雄と言ったのは…もし出来るのならば、君たちにあるモンスターを討伐してほしいのだ」


「モンスター…?」


「ああ。ジャイアント・スネークというとてつもなく巨大なモンスターでな。この辺りを住処にしている。体長は数十メートル。とてつもなく巨大なモンスターじゃ」


「数十メートル…」


「それは…」


そんなモンスターがいるのか。


ここまで戦ってきたモンスターは全て俺たちの身の丈より小さかったから、そんなモンスターがいるなんて信じられない。


「毎年、そのジャイアント・スネークに十人を超える我が同胞が食われている。少ないと思うかもしれないが、エルフは人間に比べて繁殖力が著しく低くてな。このままだと、村のエルフは年々減っていくばかりじゃ。だから…出来ることなら、君たちにジャイアント・スネークを討伐してほしい。異世界人は、魔法を超える力、スキルを持つ聞く。君たちなら、我々では到底叶わないあの化け物を倒せるのではと思うのだが…」


シエルの言葉には悲壮感が滲んでいた。


うーん。


気の毒だと思う。


だが、あいにく俺たちにどうこうできる問題ではないと思う。


俺は討伐の話を断ろうと口を開きかける。


が、一歩上原の方が早かった。


「はい!ぜひ協力させてください!シエルさんは私たちの命を助けてくれました!その恩に報いたいです!」


「あ…」


涙ぐみながらそんなことをいう上原。


どうやらシエルに相当同情してしまったようだ。


「そうか!!ありがとう。恩にきるぞ!」


シエルが声を弾ませる。


二人は手を取り合って、完全にその気になってしまった。


「…」


まじか。


上原がああ言ってしまった以上、これはなんらかの形で彼らに手を貸さなくてはならないだろう。


俺はどうやって体長数十メートルもある化け物と戦おうかと、頭を悩ませるのだった。



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