第20話


寝ている間にモンスターに襲われることはなかった。


俺と上原はそれぞれ5時間程度の睡眠をとった状態で朝を迎えた。


火を消して出発。


再び、集落に向かって歩き始める。


「あ、ここみたい…」


「ん?特に何もないが…?」


俺たちが目的地である集落にたどり着いたのは、その日の昼下がりだった。


しかし、おかしい。


周囲を見渡しても、何もない。


「本当にここであってるのか?」


「う、うん。マップでは確かにここなんだけど…」


俺たちが互いに顔を見合わせて首を傾げていると、頭上から声がした。


「おい人間ども!!そこで何をしている!!ここは我らの土地だぞ!!」


「え?」


「上?」


二人して上を見上げる。


見れば、木と木の間にかけられた橋の上から、一人の女が俺たちを見下ろしていた。


女の耳は、人間にしては不自然に長く、また容姿は非常に淡麗だ。


「エルフ…」


咄嗟にそんな単語が頭に浮かんだ。


耳長で容姿端麗。


異世界では定番となっている種族。


頭上の女性は、その特徴に完全に一致している。


「に、人間…!」


「なぜこのような場所に人間が…!」


「まさか我らの住処を荒らそうと…!」


「奴隷でも拐いにきたか…!」


「とらえろ!!」


見れば、エルフは一人じゃなかった。


今気づいたのだが、木と木の間の橋は至る所にかけられており、各所には家っぽいものも作られている。


「まさか…上原のマップの集落って、エルフの集落だったんじゃ…」


「はわわ…ど、どうしよう…?」


やがてエルフたちは木の上から降りてきて、俺たちに近づいてきた。


俺は彼らに向かっていつでも魔法を放てるように腕を構えるが…


「魔法を使ってみろ。百の矢が貴様を穿つぞ」


「…っ」


たくさんのエルフが俺に向かって矢尻を向けていたために、結局何も出来なかった。


そうして俺たちはなすすべなくエルフたちに捕らえられてしまった。



エルフの集落に迷い込み、捕らえられてしまった俺たちはロープで体を縛られて、地面に転がされた。


その周りをエルフたちが囲み、次々に質問を浴びせてくる。


「何をしにきた人間。答えろ」


「俺たち遭難者なんだ…!ロープを解いてくれ!」


「嘘をつけ」


「どうせまた我らを捕まえて奴隷にするつもりだったのだろう」


「本当なんです!私たち、いきなりエレナっていう人に召喚されて…」


「はっ、信用できるか」


「人間は息を吐くように嘘をつくからな」


俺と上原は必死になってエルフたちを説得しようとするが、彼らは聞く耳を持たない。


こうなったらいっそのこと魔法を使って離脱してみるか。


いや、それにしても数が多すぎる。


縛られた状態でもスキルは発動可能だろうが…あまりにリスクが高すぎる…


「おい、何を騒いでいるのだ」


「族長!!」


「族長様!!」


そうこうしていると、唐突に声が響いた。


エルフたちが声のした方を振り返り、道を開ける。


こちらへと、一人の幼女が近づいてきた。


「一体何事じゃ?」


「はい、シエル様。我らの住処を侵す不届きものの人間を捉えました」


「ほお。人間か」


幼女が繁々と俺らを見つめる。 


なんだろう。


さっき誰かが族長とか呼んでいたが、この子がここのトップなのか…?


とてもそうは見えないが…


「ちょっと可愛い…」


上原もそんなことを呟いている。


族長と呼ばれた少女は、ジロジロと俺らの全身を舐めるように眺めた。


それからゆっくりと口を開く。


「私はこの村の長、シエル。何故ここへ足を踏み入れた、人間」


「俺たちは…この世界に転移させられて…」


「ほお。転移とな。詳しく聞こう」


他のエルフたちと違い、幼女シエルは俺たちの話をすぐに否定せず、聞く体勢に入ってくれる。


俺と上原は、互いに補い合いながら、ここまで辿り着いた経緯を話すのだった。



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