第11話


ほんの一瞬だけ、空中を漂っているような浮遊感に支配されていた。


だが、それも一瞬のこと。


すぐに地に足のついた感覚があった。


俺は目を開ける。


「…わお。まじで森の中じゃん」


視界に飛び込んできたのは鬱蒼と生い茂る草木。


どうやら言葉通り、俺たちは本当に森の中に転移させられてしまったらしい。


「ど、どこなの…?」


隣には上原もいた。


恐る恐る周囲を見渡して状況を確認している。


「よ、よかったぁ…有馬くんがいる…一人になっちゃったらどうしようかと…」


上原が俺の顔を見て安堵する表情を浮かべる。


まぁ、その気持ちはわかるぜ。


見ず知らずの土地に一人で投げ出されるのは、どうしようもなく不安になるよな。


俺は小さい頃に両親と行った海外旅行で迷子になった時の心細さを思い出していた。


「まー、うん。同じ境遇というところで、とりあえず協力していこうぜ」


俺は上原に手を差し伸べた。


「うん!よろしく!」


上原は笑顔で俺の手を取った。


「ん?震えて…?」


女子独特の柔らかな感触が手のひらに伝わる。


と同時に、上原がひどく震えていることに気づいた。


「ごめん、有馬くん」


突然謝罪を口にした上原が抱きついてきた。


俺の胸に顔を埋めて、泣き出す。


「うぅ…う…うぅ…」


「上原…?」


「もぉ…わけわかんないよぉ…」


「…」


「いきなりこんなところに連れてこられて…追放って何…?私たち、これからどうなっちゃうの…?」


「…」


震え声でそんなことを言いながら、ポロポロと涙を流す上原。


きっと不安とか怒りとか悔しさとかが溜まりに溜まって、今決壊したって感じなんだろう。


まぁ、そうだよな。


いきなりこんなことになったら、誰だって混乱するし、怒りもするし、恐怖もする。


泣くことは、いい感情の発散になるという

し、このまましばらくは見守ってやるか。


俺は上原の肩に手を添えてしばらく上原が泣きじゃくるのを見守った。


やがて、上原は泣くのをやめて、鼻を啜りながら俺を見上げた。


「ごめんね、有馬くん。取り乱したりして」


「仕方ないと思うぞ。ことがことだし」


「あはは…優しいんだね…ごめん、制服汚しちゃった…」


「問題ない。こんくらい」


「ありがと。優しいんだね。有馬くん」


「…っ」


ちょっとドキリとした。


女子からそんなことを言わられたのは初めてだったから。


というか…


「…上原って結構可愛いんだな」


「ん?何?」


「ああ、いや。なんでも」


俺の胸に顔を埋めたことで上原のメガネがずり落ちて、ちょっとだけ素顔が見えた。


上原の目は大きく、クリッとしていてとても可愛らしく、十分美人と言っていい部類の顔立ちとなっていた。


まさか地味子があだ名の少女がこんなに可愛いなんてな。


勿体無い。


コンタクトとかにすれば、たちまち人気者だっただろうに。


「それで…その、これからどうしよっか?」


泣いたことですっかり気分の落ち着いたらしい上原がそんなことを聞いてきた。


「そ、そうだな…大まかな方針を決めておくか…」


慌てて我に帰った俺は、さて、これからどうしたものかと考える。


そして、あることを思いつき、上原へと提案した。


「とりあえず互いに最大限協力するために…自分のスキルを共有しておかないか?」

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