第5話


「次!!前に出ろ」


「はい…」


兵士に命令され、俺は直径数十センチの紫色の水晶の前に立たされた。


「いいというまで手を翳せ」


「はい」


俺は言われた通りに手を翳した。


「ん?おかしいな…」


大体1分ぐらいしたところで兵士が首を傾げた。


俺と、全く変化のない水晶を交互に見て訝しげな表情を浮かべている。


「どうかしたのですか?」


エレナが様子を見にやってきた。


「…っ」


あまりの美しさにドキリとしてしまう。


神秘的な美、というのだろうか。


本性をしっていなかったら一目惚れしてしまいそうなぐらいに整った容姿だ。


「水晶が全く光らないのです。壊れたのでしょうか?」


兵士がエレナに困った顔を向ける。


エレナは目を細めて、俺と水晶を見ていたが、やがて…


「いえ、壊れたのではありません。おそらく、この人間のスキルのランクが低すぎるだけなのでしょう」


「え…」


なんだろう。


今聞き捨てならないセリフが聞こえたような。


俺のスキルのランクが低すぎる…?


「たまにいるのですよ。水晶が反応しないほどの役立たずのスキルを持っている異世界人が」


「はぁ」


「これらの役立たずを総称してGランクスキル持ち、とも行ったりします。まぁ、早い話がゴミってことです」


ゴミ。


はっきりとそう口にしたエレナが、まさしくゴミを見るような視線を俺に向けてくる。


「…っ」


一瞬背中がぞくり、とした。


いや、マゾ的な意味ではなく…


本当に冷え切った視線だったから。


「この人間のスキルは、残念ながら役に立たなそうですね。はい、次」


だが、次の瞬間には、エレナはすっかり俺から興味を失い、列から捌けるように指示する。


「…」


俺はガックリと肩を落として後ろに回った。

ゴミ。


俺のスキルは役立たず。


そんなエレナの言葉が重くのしかかる。


まじか。


スキルと聞いていてちょっとワクワクしていたのだが…


どうやら異世界に来たとて、日陰者たる俺のポジションは変わらないらしい。


「ぷくく…あいつのスキル、ゴミとかまじかよ…」


「俺はBランクって言われたが…あいつはGランクかよ…低すぎだろ…」


「うわー…あの落ち込み方…負け犬臭がすごいんですけど…」


クラスメイトがヒソヒソと俺の陰口を叩く。


俺はすっかり落胆した気分で、残りのクラスメイトのスキルがランク付されていくのをぼんやり眺めていた。


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