第2話


気がつけば俺は、クラスメイトとともに中世の教会のような場所に飛ばされていた。


俺は周囲をぐるりと見渡す。


まず目に入ったのが、赤を基調としたドレスを身に纏った美しい女だ。


堀が深く、目がブルー。


西洋の美人といった風貌。


そして、そんな彼女の後ろには甲冑を身に纏った兵士たちが、陣をなして槍の穂先をこちらに向けていた。


「映画みたいだな」


パッとそんな感想が浮かんだ。


まるで中世を舞台とした映画の中に迷い込んだかのように錯覚する。


もしかして映画の撮影だろうか、と周囲を見渡すが、カメラの機材やスタッフらしき人間は見当たらない。


…というか俺たちさっきまで教室にいたはずなんだが。


「ねぇ、これって瞬間移動ってやつ?」


「すごーい!本物の中世の兵士がいる!」


「うわ、すっげー、美人。あのひと、女優かなんかか?」


クラスメイトたちの間でそんな囁きが交わされる中、ドレスに身を包んだ美女が前に歩み出てきた。


そして、にっこりと俺たちに笑みを向けながらいった。


「ようこそおいでくださいました、日本人の皆様。今からあなた方をここに召喚した理由を説明します」


そんな前置きとともに、その美女は、最近俺がハマっているネット小説の設定みたいなことを喋り始めた。


まず、ここは俺たちが元いた世界とは違う世界、いわゆる異世界である。


この世界には魔法が存在し、俺たちは召喚魔法と呼ばれる儀式魔法でここへ呼び出された。


呼び出したのは彼ら、エルキア王国の人間たち。


呼び出した理由は、魔王の支配から大陸を救うため。


元来、異世界から召喚した人間にはスキルと呼ばれる特殊能力が宿り、戦場で蛮勇の力を発揮する。


故に、これから数年間彼らのもとで修行を行い、ゆくゆくは魔王と戦ってほしい。


ドレスの美女…エルキアの第一王女、エレナの話をまとめるとだいたいそんなふうになる。


「理解できましたか?」


全てを話し終えたエレナは、にっこりと俺らに笑いかけた。


「え?勇者?魔王?馬鹿じゃないの?」


「ねぇ、これってドッキリ?種明かしいつ?」


「ちょっと意味わかんないんだけど…なんなのこれ?」


「うわー、あの人美人なのに残念系かー。勿体無いな」


「魔法とか…プクク…もろ厨二病じゃん…」


それに対し、クラスメイトたちの反応は冷たい。


全くもってエレナの話を信用していないようだった。


「…」


だが、エレナは表情を崩さない。


あらかじめこうなることを予想していたような雰囲気だ。


「なんかやばそうだなぁ…」


なんとなく俺は不気味な空気を感じ取っていた。


クラスメイトたちは誰一人エレナの話をしんじていないようだが…俺はかなり信憑性があると思っている。


なぜなら現に俺らが、教室からこの場所まで一瞬で移動させられた、という事実があるからだ。


これを無視はできない。


流石に彼女の話の全部を鵜呑みにするわけにはいかないが…この世界が異世界だってのはもしかして本当なんじゃ…


俺がそんなことを考えていると。


「ちょっと待ってくださいよ。いきなりそんなことを言われて信じろっていう方が無理ですよ。もう少し詳しく説明してくれませんか?あるいは、悪ふざけなら、さっさと種明かしをしてください」


クラスメイトを代表する形で、サッカー部のエースであり、王子と呼ばれるほどにイケメンの優等生、斎藤芳樹がエレナにそんな意見をぶつけた。

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