第3話  初恋アウレオラ

 手荷物検査を済ませて、搭乗口に移動する。この薄暗い照明の感覚が心地よいのはなぜだろう。



「大丈夫?」


 体育館の準備室からステージに上がろうとした時に、目にゴミが入った。

 かがんで目を擦っていると、女の子上から覗き込む様に話しかけて来た。

 見た事のない女の子だった。身長は俺より頭1個分くらい高い。すらっと細長い手足。白い肌。肩より少し長い髪。輪郭のくっきりした目鼻立ち。

 てっきり上の学年の子供だと思った。当時クラスの背の順で並んだ時に、前から5番目だった事を差し引いても、その子が自分と比べて相当大人に感じられた。

 目に埃が入ったせいで涙が出ていたからなのか、薄暗いステージを挟んで反対側にある準備室の窓から逆光が射し込んでいたからなのか。はたまたその子が本当に輝いていたのか。

 後光の差すその姿は女神が降臨した様にしか見えなかった。


 「うん。」


 普段上級生と話す事なんて無いせいで何と返せば良いかわからず、首を縦に振る事しか出来なかった。

 俺の返事を聞くと、少女はどこかに行ってしまった。

 一目惚れだった。


 これが小学校4年生の時の、学習発表会の唯一の記憶。

 本番がどうだったとか、そんな事は一切覚えていない。

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