第24話 想いに随い 思いを明かさず(7月9日)

 熊本県民文芸賞が公示され、本年も原稿用紙五十枚と真摯に向き合う季節がやってきた。

 私が応募するのは「評論・ノンフィクション部門」であるが、随想よりもルポルタージュの方がどうやら好まれるのではないかという部門名をしている。

 故に、取材を通した何かの研究を行えばどうかという考えも過るのであるが、それを実行に移したことはない。

 一昨年は「京都アニメーション放火事件」を受けた人の持つ火というものに焦点を絞り、昨年は「コロナ下の市井の在り方」をあくまでも随想という形で描き上げた。

 結果、共に入選とはなったものの入賞には届かず臍を噛む思いを繰り返しており、今年こそはと意気込んでいる。

 まあ昨年も意気込んで駄目だったわけであるが、まず以って意気込みがなければ原稿用紙五十枚の随想をまとめ上げるのは難しい。

 余程、他の部門へ転進しようかとも考えたのであるが、他の応募者に比べ三十ほど若い私は目立つようで、目をつけられている以上逃げるわけにも行くまい。

 何より、日の目を浴びせられぬ作品を書き続ける訳にも行かず、書き連ねてきた作品のためにも一矢報いるまでは、少なくとも続けるつもりである。


 ただ、先にも書いた通りで随想で原稿用紙を満たすというのは中々に難しい。

 カクヨムコン6では十万文字に挑戦したのだが、あれは我ながら狂気の沙汰であったと思う。

 日記とも小説とも評論とも異なる随想は、異なる題材で書き上げていくというのであれば続けることも容易いのであるが、同じ話題でとなると格段に難易度が跳ね上がるようだ。

 「徒然なるままに~三十路男と生きた食卓」では私自身が主題であったから何とか書き上げられたという舞台裏もある。


 では、随想とは何かといえば別の作品でも取り上げた通り、「心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくれば」の境地のことである。

 筆者としては確たるものを持ちながら読者にはそれを感じさせず、しかし読後感として湧き上がってくるものが一定程度残るものになっていなければならない。

 だからこそ本作を私は「日記」として上梓しており、エッセイや「随想」とはしていない。

 ジャンルとしては「エッセイ・ノンフィクション」が一つであるため同様に見えてしまうのも致し方ないことであるが。

 また、他の方がどのような定義をお持ちかということについては、あまり気にしてはいない。

 あくまでも一個人のこだわりであり、それを強要してしまえば私の中に在るものの一つが崩れてしまうからである。


 では、私がエッセイを書く上で避けようと気がけていることは何か。

 第一に事実と心情の単なる羅列であり、これは分類として日記に当たると考えている。

 食日記を最後につけているが、そこに一言二言添えても変わりはない。

 もっと言えば日々更新のブログなどもこれに近い形式であり、私の中では日記の一形式となっている。

 第二に意見の羅列であり、これは「意見文」という形で分類している。

 この話も前半部分は「意見文」であることが多く、それを日々更新しているため全体としては「日記」の体をなしている。

 第三に意見の明示であるが、ここが最も難しい。

 気を抜くとすぐに姿を現してしまうところがあり、拙作を見返してみて溜息を吐きたくなることが多々ある。

 故向田邦子氏のエッセイの妙はここに在り、本寸法と言われたというのも頷ける。


 いずれにせよ、大上段に構えた話をしながら私はまだまだ若輩ということである。

 それでも、若輩らしく坂の上を目指して駆け上がるように、今年もまた五十枚の魔物と丁々発止のやり取りを繰り広げたい。


【本日の出来事】

◎北海道での五輪サッカー競技 無観客開催へ

 朝令暮改とはよく言ったものであるが、それ程の協議しかされていなかったということだろうか。

 どのような決定であるかよりも、その過程の方が気になるものであった。

◎キューピー代替卵の冷凍食品開発

 大豆ミートといい植物由来の食品が増えているが、小児アレルギーで長らく大豆に苦しめられた身とすれば少し抵抗感があるというのはせめて許されたい。

 果たして栄養価は同じようになっているのかという疑問もあり、アミノ酸バランスも本当に卵に近いものであるかは気になるところである。

 それでも、新たな食品の誕生が気にかかり、口にしてみたいという欲望が湧き上がってくるのも根っからの食いしん坊ゆえか。

 私はこの世に生まれてくる全ての食に祝福を捧げたい。

◎託麻新四国八十八か所巡り 熊本市の「郷土文化財」第一号へ

 高校時代に紀行文創作のため「長崎八十八か所巡り」というものをしたことがあるが、各地にあるそれを巡れば郷土の新たな姿が見えてくるから面白い。

 熊本に根の伸びた今、時間を見つけて回ってみたいものであるが、果たして。


【食日記】

朝:ヌク

昼:日清デカうま豚キムチ、梅ひじきおにぎり、から揚げ、野菜ジュース

夕:(セブン)牛カットステーキ&ポテト(ガーリックソース)、高菜とひき肉のスパゲッティ、日本酒

他:おーいお茶

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