第102話 本領発揮
ガインさんを襲った犯人。
そいつの正体を突きとめることができれば、学園の暗部に近づける。
――で、その正体に関するヒントだが、
剣士。
女性。
以上のふたつしかない。
この程度の情報では特定など到底できない――ところだが、俺の言語スキルならば犯人を捜しだせるかもしれない。
「随分と自信があるみたいだけど……何か策でもあるの?」
「目撃者を捜すのさ」
「「「「目撃者?」」」」
サーシャに尋ねられた策について、俺はさも当然のようにそう答えたが、他の四人はあまりピンと来ていないようだった。
それもそのはずで、
「目撃者っていうけど……そんなのとっくに騎士団が調査しているんじゃない? それで誰もいなかったから犯人捜索が難航しているわけだし」
ポルフィの言うことはもっともだ。
目撃者が存在していたとするならば、すでに騎士団がその人物を特定し、情報を聞きだしているだろう。
――だが、それはあくまでも対象が人間に限られた場合だ。
俺には、人間以外との会話ができる能力がある。おかげで、リザードマンのセスともバッチリ意思疎通ができたのだ。
「俺が情報を聞きだそうとしているのは人間じゃない。――あそこを見てくれ」
俺が指さした方向に、全員の視線が向けられる。
そこにあったのは、乗馬訓練の際に使用される馬を管理する厩舎だった。
「馬って……まさか、あなた馬と話をする気?」
「俺の言語スキルならそれが可能だ」
「っ! あ、あなたの言語スキルって、そんなことまでできるのね……」
若干呆れの混じったような声で、ポルフィは言う。まあ、それだけ言われても納得はできないだろうから、とにかく実際にやってみて証明しよう。
ということで、俺たちは厩舎へと移動し、夜中に事件のあった場所を見渡せる位置にいる馬たちへ話を聞きにいった。
「ちょっといいかな」
『あん? 今日はもう訓練ないはずだろ?』
「今日来たのは訓練の件じゃなくて、聞きたいことがあるんだよ。
『!? おまえ! 俺の言葉が分かるのか!?』
もはやお約束となったこのやりとり。
こんなことなら、学園へ戻ってきた時に自己紹介くらいしておけばよかったな。
それはさておき、俺は厩舎にいる馬たちに事情を説明して情報を求めた。
すると、
『確かに、昨日の夜、そこで人間の男女が何やらもめているのは見たぜ』
一頭の若い馬が、有力な証言をしてくれた。
「本当か!?」
『ああ。夜道を歩いている男に女が背後から話しかけていたよ。そのあと、互いに剣を抜いて激しくやり合っていたけど……痴話喧嘩か?』
「重大な襲撃事件だよ! それで、その女性の特徴は何か分からないか?」
『あぁ……何せ薄暗かったからなぁ……腰まで伸びる長い髪を俺たちの尻尾みたいな形にまとめてたってことくらいしか分からないよ』
「ポニーテールってわけか」
とはいえ、それは邪魔な髪をよけるため、戦闘の時にのみ披露する髪型かもしれない。
「他には何かなかったか?」
『うーん……戦いは男の方が終始押されていたんだが、その理由は相手の剣がかなり特殊だったんだ』
「特殊な剣?」
『炎をまとっていたんだよ。あれじゃあ、近づくだけで火傷しちまう。ただ、男の方はそれでも退かずに戦っていたが……たいしたもんだよ』
剣に炎をまとわせる――相手は炎属性魔法を使うのか。
「ありがとう。とても参考になったよ」
『どういたしまして』
俺たちは情報をくれた馬たちに礼をして、厩舎をあとにする。
それから、教えてもらった情報をみんなで共有した。
「炎魔法を駆使する髪の長い女剣士……学園関係者だとすれば、かなり絞られるわね」
「手分けして探してみましょう!」
「ああ、そうしようか」
俺たちは手がかりに合致する学園関係者を見つけだすため、二手に分かれて捜査することになった。
――ちなみに、その振り分けだが、
「私はハーレイと一緒に行くわ。いいわよね?」
と、半ば強引にサーシャとコンビを組むことになった。
「それじゃあ、行きましょうか」
「お、おう」
俺はサーシャに手を引かれながら、エルシーたちと別れ、校舎の南側から当たっていくことにした。
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