第95話 決着
ロバート・シャルトランに続き、アーニー・ライローズとの戦いに勝利することができた。
これで俺はCクラスに昇格。
他のみんなも、積極的に昇格試験に挑戦できるだろう。
会場から注がれる拍手は鳴り止む気配がない。
――だが、少し気になることがある。
それは、審判を務めていた者をはじめ、学園職員が集まって何やら協議を行っているようなのだ。
やがて、ひとりの職員が静かにするよう呼びかけ、会場が静まり返ると咳払いを挟んでから説明を始めた。
「えぇ、ただいまの昇格試験ですが……戦闘に不自然な点が見られましたので無効試合といたします」
しばらく沈黙が続いたあと、大きなざわめきが弾けた。
「無効試合!?」
「どういうことだよ!」
「あいつが突然倒れたのは、ハーレイの言語スキルの効果だろ!」
会場からは激しいブーイングが飛び交う。
一方、俺は「もしかして」という嫌な予感があったため、そのような説明をされてもリアクションは薄かった。とはいえ、すんなりと受け入れるわけには当然いかない。すぐに抗議をしようと近づいた時だった。
「ふざけるな!!」
怒号が響き渡る。
その声の正体は――試合を観戦していた騎士団のガインさんだった。
ガインさんは全力疾走で観客席から俺たちが戦ったステージまでやってきて、無効試合を宣言した学園職員と対峙する。
「その結果には意見させてもらうぜ」
「ガ、ガイン殿!?」
いきなり騎士団の人が会場に乱入してきたことで、学園職員はひどく動揺していた。もしかしたら……この試合結果を知られたことがまずかったのか?
「俺は今の試合を最初から最後まで見ていたが、その経過に何の落ち度もない! 無効試合だというなら、その根拠を明確に示してもらおう!」
怒りを込めた声が、学園職員に注がれる。
その迫力に押されたのか、震える声で説明を始めた。
「ア、アーニー・ライローズが終始戦いを優位に進めていたにもかかわらず、突然失神してしまうのは明らかに不自然で――」
「それがハーレイの持つ言語スキルの力だ! スキルの使用は全面的に認められているし、ルール違反の魔法を使ったというわけではない! よって、この戦いは間違いなくハーレイの勝利だ!」
「し、しかし……」
「もしも無効試合という結果を押し通すというなら……しかるべき組織を通してどちらが正しいのか確認してもらいましょう」
「ぐぐっ……」
どうやら、学園側としてもそれは避けたいところらしい。
前回のロバート戦といい、昇格試験を巡る一連の不正行為は国家絡みというわけではなく学園が独断でやっているのか?
だとしたら、全体的にではなく、特定の貴族が絡んでいるってわけか。
「どうやら文句はないようですな」
ガインさんはそう言うと、俺の右腕を取って高々と天に掲げた。
「おまえの勝ちだ、ハーレイ」
「ガインさん……」
改めて、俺の勝利宣言がなされ、拍手が沸き起こった。
――とはいえ、この件はまだまだ収まりそうにない。
何やら、不穏な空気が漂い始めている気がしてならなかった。
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