第81話 強い心で
運ばれてきた料理を楽しみながら、俺たちは学園のことについて話を聞く。
最初は何気ない話題だったが、
「正直なところ……今の学園には失望した」
いきなりとんでもないことを言いだすガインさん。
騎士団でもかなり高い地位にいる人物の発言――そう考えると、なんだかとんでもない場に居合わせてしまっているのではないかと思えてくる。
それはポルフィも同じようで、「そんなことを言って大丈夫か?」と心配そうな顔をしてこちらに顔を向ける。たぶん、同意を求めているのだろう。そう思った俺は静かに頷くことで返事をした。
「もちろん、こんなことを話せるのはおまえたちだからこそ、だ」
俺たちが唖然としていると、骨付きのチキンにかぶりつきながらガインさんは言う。
その真意を捉えきれなくて、俺はその意味を尋ねる。
「俺たちだからって……どういうことですか?」
「変に誤魔化したつもりはないんだがな。――今日のおまえたちの戦いを見ていると、信頼できる人物だなぁと思ったから話したまでだ」
俺とポルフィは再び顔を見合わせる。
戦いぶりを見ただけだというのに、それでここまでぶっちゃけられるものなのか……でも、その狙い通りと言ったらいいのか、俺もポルフィも、ガインさんがそんな話をしていたとは外部へ漏らさないだろう。そういう意味では、ガインさんの判断は正しいと言えた。
「さて、話を戻すが……俺が失望している理由については、もう分かっているよな?」
「あのロバート・シャルトランですね」
ポルフィが言うと、ガインさんは「そうだ」と即答する。
「シャルトラン家が動いてくるのは間違いない」
「それってまさか……報復、とか?」
昇格試験のルールとはいえ、名家の息子をEクラス送りにした俺に対し、そのシャルトラン家がなんらかの手を使ってくるかもしれない――俺はそう考えていたのだが、ガインさんは違った。
「それはないだろうな。ロバートは三男坊ってことでもともと立場は弱いのだが、今回の件で完全に見放されるだろう」
「自業自得よ!」
俺以上に怒っているポルフィ。
まあ、今回は俺がロバートと戦ったわけだけど、もしかしたらポルフィがその役目をおっていたかもしれない。――いや、今回は免れたとしても、次回どうなるかは分からない。なぜなら、これからさらに昇格試験を受けていくうえで、今回のような件は繰り返されるかもしれないからだ。
どうやら、ガインさんも同じ意見らしい。
「これから先も昇格試験を受けようというなら……ロバート・シャルトランと同じ立場の者と戦うことになるだろう。ランクが落ちれば、自分たちの家の名に傷がつく――そう判断した連中がどのような手を打ってくるか……穏やかな話じゃなくなってくる」
真剣な眼差しで語るガインさん。
しかし、それでは、
「それじゃあ……昇格試験の意味がないじゃないですか」
「本当よ……私たちはこれから何のために頑張ればいいの……」
ポルフィの声は弱々しかった。
俺としても、その現状を見逃しておくわけにはいかなかった。
「安心しろよ、ふたりとも。――俺がそうならないよう、声をあげる」
「ガインさんが?」
俺たちにとっては心強い言葉だ。
しかし……それが原因で、ガインさんの立場が悪くなったりしないのだろうか。
それが心配だった。
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