第79話 誘い
難癖をつけられて危うく反則負けとなりかけたが、ガインさんが間に入ってくれたおかげでなんとか勝利判定をもらうことができた。
これで、俺とポルフィはともにDクラスへ昇格できる。
「やったわね、ハーレイ!」
「ああ!」
俺とポルフィはハイタッチをして勝利を喜び合う。この日を夢見てずっと鍛錬を続けてきたんだ。喜びもひとしおと言ったところ。
ただ、そうなると気にかかるのがマイロのことだ。
もしも怪我なく戦えていたら、きっと彼も勝利できただろう。
救いは、マイロがまったく気落ちしていないという点だ。
今回の昇格試験こそ逃したが、これ一回きりというわけではない。一ヶ月経てば、また挑戦できるのだ。
するとそこへ、
「よくやったぞ、若き戦士たちよ!」
ガインさんがやってきた。
俺はその姿を視界に捉えると、すぐに駆け寄って深々と頭を下げる。
「さっきは本当にありがとうございました!」
「何を言う。あれだけの逆境をはねのけて掴んだ勝利を大人の勝手な都合でひっくり返させるわけにはいかんからな」
ガインさんは「がっはっはっ!」と豪快に笑った後、ハッと何かを思い出したように目を見開き、俺とポルフィに近づくよう手で合図を送ってくる。それを見て、俺たちはガインさんへとの距離を縮めると、
「この後、飯でもどうだ? ……いろいろと知っておいてもらいたいことがある」
大きな体に似合わない小さな声で、俺とポルフィを食事へと誘う。
だが、ただ単に頑張った俺たちをねぎらおうというだけでなく、もっと別の意図が隠されている――それが、「知っておいてもらいたいこと」なのだろう。
俺とポルフィは驚いて顔を見合わせる。
――が、それは一瞬のこと。
目を合わせるだけで、互いの答えは把握できた。
「分かりました。行きます」
「私も」
「そうか! そいつは楽しみだ! では早速これから行こう!」
「こ、これからですか!?」
寮の門限もあると伝えようとしたが、「それくらい、俺がちょっと口添えをしておけばどうとでもなるから気にするな」と返された。
俺としても、ガインさんの言っていた「知っておいてもらいたいこと」には大変興味があったため、その申し出は是非とも受けたいと思っていた。それはポルフィも同じようで、俺たちは揃って誘いを受けることに。
「じゃあ、支度が終わり次第、学園の正門に来てくれ。こちらで馬車を用意しておくから」
「「はい!」」
そう返事をしてから、俺たちはそそくさと試験会場をあとにする。
これ以上この場にとどまって、目を覚ましたロバートに絡まれたら嫌だからな。
俺とポルフィ、そしてガインさんの三人は揃って試験会場を後にする。
その背後では、試験に立ち会った教師陣が神妙な面持ちで立ち尽くしていた。
一度寮の部屋へと戻り、荷物を置いて着替えを済ませると正門へと向かう。
男子寮を出ると、
「思ったより時間がかかったわね」
すでに支度を終えたポルフィが待っていた。
ガインさんに言われて私服を着用しているが……なんか、新鮮だ。普段は鍛錬で着る学園指定の運動服が多かったからな。
「? 何?」
「っ!? い、いや、なんでもないよ。行こうか」
「えぇ、そうしましょう」
なんだかちょっと変な空気になったが、気を取り直して正門へと向かって歩きはじめた。
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