第25話 暴かれた真実
「アレンさん……今、嘘をつきましたね?」
「何?」
「俺には嘘を見抜けるスキルがあるんです」
「!?」
初めて、アレン・トレイトンの表情が歪む。無言だけど、あえてセリフをつけるなら「なんだと!?」と言った具合か。
「今あなたの言った魔鉱石は今のマディス鉱山から採掘されないというのは嘘ですね?」
「な、何を言っているんだ、君は」
あからさまに動揺しているな。俺のスキルについて知らなかったっていうのが大きく影響している。ここまでくればあと一押しだ。
「モンスターに魔鉱石を埋め込んで強化し、レヴィング家のご令嬢であるサーシャを襲撃させたのもあなた――いえ、トレイトン商会の仕業ですね?」
「バカを言うな!」
アレンさんは声を荒げる。
「恩義あるレヴィング家に対して我が商会がそのようなマネをするはずがないだろう! 子どもだからとてこれ以上侮辱すると許さないぞ! 大体、私はオークのような下劣なモンスターは大嫌いなんだ! そんなモンスターに魔鉱石を埋め込むなどあり得ない!」
激しく捲し立てるアレンさんだけど……残念。あんた今決定的な証拠を口走ったよ。
「どうしてわかったんですか?」
「な、何?」
「なぜ、サーシャ・レヴィングを襲ったモンスターがオークだと知っているんですか?」
「!?」
実は、サーシャの乗った馬車がモンスターに襲撃されたという事実は表沙汰にこそなっているが、どんなモンスターに襲撃されたかについては言及されていない。これについては確認済みだ。
レヴィング邸でグランさんがその話題を振られても、「モンスター」としか答えなかったのには、数年ぶりに現れたモンスターに対し、国民が不安を募らせないよう、最低限の情報だけを公表するようにという意図があったからだ。
それなのに、アレンさんはオークだと断言した。
一緒にいたゴブリンではなく、きっぱりとオークだと言った。
それはつまり、
「あなたがオークへ魔鉱石を埋め込むよう指示を出したから知っていたんですよね?」
「ち、違う! 私はそのような指示を出した覚えはない!」
カーン、と鐘の音が頭の中で鳴り響く。
「あ、それも嘘だ」
「ぬぐっ!?」
あとはもう、喋れば喋るほどボロが出る。
嘘だ嘘だと攻め立てることもできたけど、そうした場合、もっとも恐れていた第三者への擦りつけが発生する恐れがある。だから、俺が欲しかったのは本人からの自供だったのだ。
「少し……話を聞いてもいいですかな?」
グランさんに肩を叩かれたアレンさんはその場に膝から崩れ落ちた。
これから騎士団による厳しい尋問が始まり、事態の真相が明るみに出るだろう。
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