第16話 嘘

※予約投稿の日付が間違っていました。

 申し訳ありません。



 大人同士が挨拶を終えると、アレンさんの視線は俺へと向けられる。


「ん? 君は?」

「初めまして。ハーレイ・グルーザーです」

「!? ハーレイ・グルーザー!?」

 

 アレンさんの表情が一変。

 俺の名を聞いた途端、目を見開いて驚いている。


「彼は昨日のモンスター襲撃事件でサーシャ様を救ってくださった恩人だ」

「え、えぇっ! その事件については今朝王都でも話題になっております! ま、まさか、あなたがその救世主だったとは……」


 救世主、か。

 ……なんだかちょっとこそばゆいな。


「私はてっきり昨日の襲撃事件はファーガソン殿が解決したと思いましたが」

「恥ずかしながら、思いのほか苦戦してね。こちらのハーレイくんに助けてもらったのだ。なかなか見込みのある少年だよ」

「はっはっはっ! 若者が元気なのは頼もしいことですな!」

「うむ。私としても、将来が今から楽しみで仕方がない!」


 笑い合うふたり。

 遠くから見ていると、良好な関係を築いているように見える。

それにしても、商人と騎士か……騎士団で使う新しい武器の紹介でもしに来ていたのだろうか。


 ――でも……なんだ?

 胸騒ぎがする。


 漠然とだが、俺の中でアレンさんへの不信感が膨らんでいった。


「このアースダイン王国の平和を願う者として、頼れる若者の登場は実に喜ばしいことです」


 アレンさんへ視線を送っている最中に彼がそう語った直後、


 カーン。


 甲高い鐘の音が響き渡る。


「えっ!?」


 俺は思わず反応してしまったが、周りはまったくの無反応だった。


「どうかしましたか、ハーレイ殿」

「あ、い、いや……」

 

 どうやら、さっきの鐘の音は俺にしか聞こえていないらしい。

 ――と、いうことは、


「ひょっとして……スキルか?」


 この場で発動しそうな能力といえば【嘘看破】だが……アレンさんの発言に嘘があったってことか?

 ……くそっ!

 よく聞いていなかった!

 俺はすぐに【会話記録閲覧】を発動させようとしたが、


「では、私はこれで失礼致します」


 結局、【嘘看破】であるかどうか確認する間もなく、アレンさんが退室してしまった。あとを追いかけようにも変な感じになるし、何より、


「さて、それじゃあ、昨日の事件の顛末を聞かせてもらおうか」


 ゾイロ騎士団長はすでに席に着き、キラキラしている瞳でノリ気となっている。

 さらに追い打ちをかけるように、


「お待たせしてしまったわね」


 サーシャも合流し、いよいよ間に合わなくなる。

 ……まあ、まだ能力については分からないことも多いし、改めてアレンさんを訪ねるとしよう。

 今はまず、騎士団長を優先させないと。



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