133話 Otair/愛の言葉を君達に
西園寺さんからみんなでカラオケしている写真が送られてきたから、みんな一緒にいるのは知っていた。
今ここで俺は自分の気持ちとみんなの想いに決着をつける!!
「なんなの、話って?」
「そう言えばここ、俺がはじめて西園寺さんに話しかけられた公園だな……ここから始まったんだよな」
「え、ええ……」
西園寺さんが頭を傾げる。
西園寺さんだけではない、みんなこの状況で戸惑っている様子だった。
公園の屋根付きベンチに座り、俺はみんなに宣言した。
「今から俺の本心みんなに言おうと思う」
みんなハッとしたように俺を見つめた。
「本心ってゆうくん、もしかして」
「今からこの中で好きな人を選ぶってこと!?」
「心の準備が……」
「湊ちゃん……私もできない……けど、この日をずっと待っていた気がする」
「ゆーくん…………」
それぞれ戸惑いながらも俺の言葉を受け止める覚悟を持とうとしていた。
「言って、ゆうくん。どんな答えが来ても私達は覚悟ができている」
西園寺さんの目は真剣だった。
西園寺さんだけではない、みんな真剣に俺の言葉を待っていた。
これはもう言うしかないな……。
最後の勇気を振り絞り、俺はみんなに告白した。
「みんなの気持ち……すごく嬉しかった」
みんなの顔を見て俺は続けて言葉を出した。
「こんな、キモオタの俺を好きだと言ってくれた……はじめは戸惑ったけど、でも、みんなの気持ちはぶっちゃけめちゃくちゃ嬉しかったんだ」
そう、これは紛れもない事実だ。
みんなには迷惑そうな態度をとってしまったこともあったけど、でも本心はめちゃくちゃ嬉しかった。
「西園寺さん……」
西園寺さんの方を向く。
「モデルで美人な西園寺さんのことをはじめは俺と生きる世界が違うと思っていた。でも、俺に興味を持ったって言ってくれて、すごく嬉しかったんだ。その後も西園寺さんのアプローチをクールに交わしてきたつもりだけど、毎回ドキドキしていた……俺はきっと、西園寺さんを初めて会った時から意識していたんだと思う。俺は西園寺さんのことを最初から好きになっていた……」
「ゆうくん……」
次に香乃。
「香乃……お前は幼馴染みで昔から俺のことを好きだと言ってくれたな。その想いは子供の頃だけだと思っていたが、今でも俺への気持ちは変わっていなかった。まさか地元を出てくるほどとはな。再会して美人になった時は驚いた。でも、お前は何にも変わってなかった。俺がずっと好きな幼馴染みのままだった。こんな俺をずっと好きでいてくれてありがとうな」
「ゆうちゃん……」
次に星川。
「星川、お前とは愚痴の言い合いをよくしていたな。はじめは生意気な後輩程度の認識だったけど、でも俺はお前との時間は好きだったんだ。それで、何言っても楽しそう話してくれるお前のことも俺は好きだったんだ。お前の不器用な思いも、告白も全部込みで俺はお前のことが好きだったんだと思う。好きだったからこそ、俺は京都までお前を助けに行ったんだ。この気持ちに嘘はない」
「先輩……」
次は朱音先輩。
「朱音先輩、大学の頃変に遺恨を残したまま別れてしまったからいつかまた会いたいと思っていた。まさか熱海で再会するとは夢にも思ってなかったけど。でも先輩は俺の好きな先輩のままだった。マイペースで何考えているのか、わからなくて、それでいて、一緒にいると楽しい人。そんな先輩の言動にはいつもドキドキしていたけど、でも俺は先輩とこれからも一緒にいたい。一緒にいて、また色んなことを一緒に感じたい」
「ゆーくん……」
最後に那奈さん。
「那奈さんはお隣さんであまり面識はなかったけど、でも俺は隣から聞こえてくるアニメの音をいつも聞いていた。いつかこの人と語り合いたいと心の底から願っていた。まさかあんな形で叶うなんて思わなかったけど。でも那奈さんとは本当に話があって、那奈さんとの時間はいつもあっという間に過ぎていった。初めてここまで心を通わせた人ははじめてだった。だからこそ俺のことが好きだと言ってくれた時、ものすごく嬉しかったんだ。俺も那奈さんのことが好きだ。これからも一緒に好きなことを語り合いたい」
「神原くん……」
一人一人に自分の想いを告げた。
みんな何も言わず聞いてくれた。
さて、本題はここからだ……。
「これが俺のみんなへの想いだ。今まで吐き出すことを避けてきた俺の本心。俺は……みんなのことが本気で好きなんだ……!!」
夜風が俺たちの間を吹き抜ける。
俺はさらに小さく深呼吸をして、口を開いた。
「みんなのことが好きだからこそ俺は……この中でたった1人を選ぶというのができない、みんな同じくらい好きになってしまったから……」
そう、こんだけ悩んだけど結局俺は1人を選ぶことができなかった……。
「幻滅してもらっても構わない。納得しなくてもいい……こんな半端な答えじゃみんなが納得してもらえないのもわかる。だけど、これが紛れもない俺の本心なんだ。この2次元オタクの俺が考え出したたった一つのルートなんだ……」
言い切った。
絶対みんな呆れただろうな。
みんな好きという何とも身勝手な答え。
でも俺にはそれ以外の答えが見当たらなかった。俺は本心を伝えた。あとは受け取った彼女達の問題だ……。
あらゆる罵詈雑言を言われることを覚悟して、俺はベンチに座りみんなの言葉を待った。
そして———。
「ゆうくん……」
「ゆうちゃん……」
「先輩……」
「ゆーくん……」
「神原くん……」
みんなの返答を聞いた……。
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