オタクに恋は無理らしい

72話 おっぱいは世界を救う

　隣の女湯で女同士のイチャコラが始まるという俺得イベントが起った。

「き、急に何を……！」

「いや、どんな感じかなって」

「そんな、笑顔で揉まないで……きゃっ！」

「ふふ」

　クッソ、朱音先輩……！　羨ましい……じゃなくてなんて大胆なんだ！

「生まれつきの体質ですか。いいな」

「良くないよ。重いし、疲れるしそれに……男の人には変な目で見られるし。あとは太っているように見られちゃう……エレナちゃんみたいに全体のスタイルが良ければいいんだけど」

「確かに！　エレナちゃん！　めちゃくちゃスタイルいいよね！！　流石モデルさんって感じ！」

　香乃と西園寺さんも、おっぱい談話に参加する。

「まあ、美容にはそれなりに気を遣ってるからね。ゆうくんに好かれる為に……って、朱音さん急に何を！　きゃっ！」

　モミ

　な、何が！　また何が起こった！

　俺は女風呂がある方へさらに歩み寄った。

「いや、綺麗なおっぱいさんだなぁーと思って」

「それで急に揉むなんて、きゃっ！　香乃まで！」

「いや、本当にゆうちゃんが好きなおっぱいかなと思って」

　キタキタ、これですよ。これ！

　いいぞ〜〜もっとやれ。

　鼻息がさらに荒くなっていく。

「もぉーー！　でも、香乃もそれなりのを持ってるよね……」

「へへ。中学生の頃、ゆうちゃん巨乳の人が載ったエロ本ばっかり見てたから、頑張って私も巨乳になる為に牛乳毎日飲んでいたんだよね！」

　確かに香乃の胸も素晴らしいが、理由がゴミすぎるな。

「へぇー。どれどれ」

「きゃっ！」

　香乃が色っぽい声を出す。

「エレナちゃん！　不意にやるのはずるいよ！」

「さっきのお返しよ」

「それなら私だって」

「きゃっ！　香、香乃ちゃん！　そ、そこはダメ///」

「へぇー！　エレナちゃんここ弱いんだ……」

　おいおい！　香乃の奴、どこ触ってんだよ！　み、みてぇーー！　

　塀は約3メートル……登ればなんとか行けそうだが……だがしかし！

　モラルが……モラルが俺をギリギリで食い止めている！！

「くすぐったいよ〜〜」

「ふふ。エレナちゃん可愛い」

「もぉーー。朱音さんまでからかわないでください！」

「そう言えば、朱音さんもそこそこありそうですよね！　さっきのお返しに失礼しまーす！」

　モミモミ

「ふふ。どう？」

「微動だにしない！？」

「ふふ。揉むからには揉まれる覚悟は常にもってるから……」

「な、なるほど……」

　格言きたな。

「もお〜〜　みんないい加減に……ってきゃっ！」

　モミモミ。

「ど、どうしたの……湊ちゃん。急に私のを……いやっ///……」

「いや揉めば、その養分を吸収して私もこれくらい大きくなるかなって……」

「湊ちゃん……顔が怖いよ」

　すげぇ！　おっぱい祭りやん！　向こうでは本当の楽園が領域展開されている……！　みてぇーー！　しかしモラルが……。

　ううっ……。

　俺はさらに女風呂の方の壁に近づいた。

「ふふ。湊ちゃんは大きくなりたいの？」

「はい。私のってほら。みんなに比べたら小ぶりじゃないですか。これ昔からコンプレックスだったんです。それでバストアップの方法をいくつか試したんですけど、どれも実らなくて……」

　まあ、確かに星川は貧乳だよな。

　だがしかし！

「大丈夫！　湊ちゃんの努力はいつか報われるよ！」

「香乃さん……」

　貧乳はステータス！　おっぱいは大きければいいというものではない。

　それをコンプレックスで恥じらう女性もまた魅力的だ。

「それにゆうちゃんも良く言ってた！　"貧乳はステータス"だって！！　だから湊ちゃんは小さくても大丈夫だよ！」

　香乃が俺の代弁をしてくれた。

　あいつ、本当俺の下（しも）のことはよくわかってるよな。

　複雑だぜ……。

「くっ！　馬鹿にしちゃって！」

　モミモミ

「きゃっ！　やったなー！！」

　モミモミ

　笑い声が響いた。

　楽しそうだな。これを永遠に聞いていたいぜ。というかこれはもう見るしかねぇーぜ！　モラルなんて知ったことか！！　俺はまともな人間をやめるぞぉぉぉ！　モラルゥゥゥゥーー！

　百合好きな心に火が灯って、たち上がった。

　あ、物理的な意味での立つね。

　しかし。

「話は変わるですけど、朱音先輩ってゆうくんに告白されたことがあるって本当ですか？」

　何気ないタイミングで放たれた西園寺さんの問いに一同固まった。

　そして俺自身も……。

　俺は女湯から少し距離をとった。