第7話 鉄橋からダイブ
橋の真ん中まで来た時に、中国軍の車列が橋のふもと辺りに着いた付いた。浜田さん、水崎さんが、機関銃を出して、先頭車両のタイヤを狙った。タイヤがパンクし、その車は横転し、橋への後ろの車の侵入を邪魔する形で止まった。佐田倉さんがおっと安堵の声を出した。
横転した車の左右の端から、中国兵が銃を持ちこちらに走ってきたが、水崎さんと浜田さんの機銃掃射に阻まれて、なかなか近付けない。そうやって時間稼ぎをしながら、私達は橋を後ずさりしながら、進んでいった。
しかし、ことはそんな簡単ではなかった。中国軍の車列はまだ他にもいたのだ。
今度は橋の反対側から、数台の車がやってきて、橋のふもとに私達の侵入を阻止するように止まり、中国兵が降りてきた。私達は橋の真ん中で、挟み撃ちにされてしまった。
中国兵の発砲が抑え気味になった。私達を通り抜けて、相撃ちになってしまうのを恐れたのだろう。威嚇程度に、空に撃ちながら、じわじわと近づいてきた。
「川に飛び込め」
リーダーの浜田さんが言った。確かにそれしか方法はなかった。川までは10mくらいの高さで、水は満々と満ちていた。10mとは大体3階建ての家の屋上くらいの高さだ。普通は飛べない。
浜田さんが早くという感じで、みんなに手を振った。
水崎さんが佐田倉さんを促した。佐田倉さんは躊躇したが、思い切って飛び込んだ。
次に水崎さんが飛び込んだ。バシャーンという音とともに、水しぶきが上がり、その水しぶきを狙って、中国兵が機銃掃射した。でも、水の流れが速いのと,かなり深くまで潜るせいで、血が浮かんでこなかった。つまり、飛び込めば助かる。
でも、私にはそんな高いところから飛び降りる勇気がなかった。足がすくんで、動けなかった。その時、張本さんが私の腕を掴んだ。
「飛ぶよ」
そう言って、張本さんは飛び込み、私はバランスを崩して、一緒に川に落ちていった。次に気がついたときは、水の中で、とにかく水面に顔を出そうとしていた。水面に顔を出し、周囲を確認すると、はるか遠くに私達が飛び降りた橋が見え、かなり下流へ流されていた。
岸に上がろうにも、流れが早く、思い通りに体が進まない。どんどん流されて、とにかく息をするだけで精一杯だった。かなり流されて、川が大きく右に曲がり始めた。左岸は切立った崖だが、右岸はなだらかな小石の岸になっていて、そこなら岸に上がれそうだった。見ると、浜田さんが岸に上がっていた。私はうまく体を動かして、右岸により、岸に上がれた。
「良かった」
浜田さんは私の顔を見て言った。他の人は見ていないという。
川に沿って下流へ行くと、佐田倉さんがうずくまっていた。私達を見ると、安堵の声を上げた。3人でこれからどうするか、話した。幸い、私の通信機は壊れていなかった。定時連絡は午後5時なので、まだ時間があるため、指示を仰ぐわけにはいかない。地図を広げて、川を少し下流に下り、山脈の横断道を東に進むと、鉄道に交差するのが分かった。鉄道沿いに進めば、山中を迷子にならずに済む。ひとまず、下流に下り、その後、鉄道を目指すことになった。
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