#12 「人形遊び」
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常夜灯が微かに照らす薄暗闇の中で、凪は空調の小さなうなり声とマナの寝息を聞いていた。
なんだかチカが隣で寝ているみたいだ──ふとそんな錯覚を覚えて隣を見るが、そこにいる少女はやはりマナだ。明るい髪色が仄かな照明の下で薄ぼんやりと浮いて見える。彼女も夢を見るのだろうか。見るとしたら、それはどんな夢なのだろうか。
仰向けに寝転がり、視線を天井へ移す。オレンジ色の小さな明かりをぼうっと眺めながら、今日のマナとの会話やチカとの思い出をなんとなしに頭の中で反芻する。
そんな時間の中でふと気づく。チカの記憶を思い出す度に生じていた目眩が起きなくなっている。なぜだろう? 少しの間その原因に思いを巡らせていたが、結局これといった理由は分からなかった。
そうしているうちに、マナと笑いあった時間の穏やかな余韻は少しずつ引いていった。意識が再び現状の不安へ向く。ぼやけていた頭がまた段々と緊張し、目が冴えていく。
明日の予定を考えなければいけないが、ろくにその話もしないままマナを寝かせてしまった。
──私と同じ存在が寄り集まって隠れ住んでる場所を知ってる。そこに、私を連れていって。
他に行く当てもないので、
一度体を起こし、ベッドの脇で蛇の抜け殻のようになっていたジーンズを手繰り寄せる。ポケットを弄り、携帯端末を取り出す。
画面の光に目を細めながら目的地までの経路を検索する。ぎりぎり都内だが、西の端の山奥らしい。ここからだと最速で二時間はかかりそうだ。
それを踏まえ出発時間を考える。マナを狙う相手にいつ居場所を突き止められるか分からない。できるだけ早く都心を離れたほうがいいだろう。
凪は無意識にマナの方を見た。彼女は緊張の緩みきった幸せそうな表情をその顔にたたえ、ゆっくりとした呼吸で胸を上下させている。できることならこのまま気が済むまで寝かせてあげたいが、状況が状況なので仕方がない。
端末に視線を戻し、始発の時間を調べる──四時五十二分。
凪はそこまで終えると、駅までのタクシーを予約した後で目覚まし時計をセットし再びベッドに潜った。汗に濡れた冷たいシーツが肌に張り付く。
少しでも頭を休ませようと思って目を瞑るも、募る不安に眠りを妨げられる。何度か深い呼吸をして体から緊張を追い出そうとするが、いくら吐き出してもすぐに不快感が胸を覆っていく。
結局その日は一睡もできず、隣で横たわるマナの寝息を聞きながら夜を明かした。
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