第94話 空母被弾
1945年6月2日
1
午前11時30分頃に襲来した敵重爆150機の編隊は30機以上を失いながらも、100機以上が投弾に成功し、その結果として1機艦は戦艦1隻、駆逐艦3隻が250キログラム爆弾を1~2発喰らうという損害を被った。
だが、爆弾2発が命中した「霧島」は艦の後部に取り付けられていた高角砲1基、機銃3基が損傷するなどの損害を受けてしまっていたが、戦闘・航行不能になるような損害を受けたわけではなかった。(爆弾1発を喰らった駆逐艦3隻はいずれも沈没)
そして主力艦に損害が発生しなかったことに関して1機艦の首脳陣が安堵したのもつかの間、敵重爆の第2波と思われる光点が各艦のレーダーに映し出されていた。
2
「あれか、日本軍の機動部隊は」
第421爆撃団指揮官を務めるマイク大佐は遙か下に見える敵艦隊を視界い捉えていた。
「空母は11隻か・・・」
「指揮官機より全機へ、敵艦隊に空母は11隻存在している。よって部隊を11隊に分けて投弾を実施する。全機突撃せよ!!」
マイクが指示を出し、B24が加速した。
そしてB24の加速を合図とするかのように、敵艦隊の外周に存在する艦艇から一斉に火災炎がほとばしった。トラック沖海戦や2度のマリアナ沖海戦で散々米軍機に辛酸をなめさせた防空艦が射撃を開始したのだろう。
艦上に火災炎をほとばさせている艦は多く、多数の射弾が敵艦隊から発射されていると予測されるが、B24の近くに炸裂する射弾は思いのほか少ない。
日本海軍の防空艦に搭載されていると言われている高性能高角砲も高度6000~7000メートルを飛行しているB24に対しては命中率が落ちるのだろう。
「敵艦隊の対空砲火は余り脅威ではないな」
敵艦からの対空砲火の拙劣さを見たマイクは占めたものだとほくそ笑んだが、悲劇は次の瞬間やってきた。
マイクが座乗しているB24から少し離れた空を飛んでいたB24数機の近くで爆発が起き、B24、4機が一斉に吹き飛ばされたのだ。
B24の被害はそれだけに止まらない。
次はマイク機の真下で先程と同規模の爆発が起き、爆発に巻き込まれてしまったB24、3機が消し飛び、1機が右翼をもぎ取られて海に墜落していった。
「全機散開せよ!!」
突如発生した大爆発を回避すべくマイクが膝下全機のB24に対して散開指示を出したが、B24編隊が完全に散開しきる前に更に数機のB24が敵の対空射撃に喰われてしまった。
「敵戦艦のバックショットか・・・」
マイクはここにきて突如発生した爆発の正体に気づいた。マイクも敵戦艦がバックショットを使うということ自体は他の隊の戦闘詳報を読んで知っていたが、マイクが率いている中国・成都基地所属のB24部隊が敵艦隊を攻撃するのは初めてだったため、警戒がおろそかになってしまったのだ。
敵戦艦からのバックショットを辛くも凌ぎ切ったB24編隊に対して輪形陣の内部に位置している空母と思われる艦も対空射撃を開始するが、敵高角砲の重爆に対する命中率は低いため、大した脅威にはならなかった。
やがて目標の直上に到達したマイク機が爆弾を投下し、健全な他のB24も順次目標に対して投弾を開始した。
B24、1機当たり20発を搭載する500ポンド爆弾が1秒間隔で投下され、1分過ぎぐらいから爆弾を炸裂が始まった。
「どうだ?」
マイクは風防越しに投弾した空母の様子を見た。
狙った空母の付近に一瞬にして数百もの水柱が立ち昇り、敵空母轟沈を思わせるような光景が現出したが、水柱が収まるのと同時に健全な空母の姿が現れた。
マイク隊は狙いを定めた空母に対して1発の命中弾を得ることも出来なかったのだ。
「他の隊はどうだ?」
自分の隊が爆撃をしくじったことを確認したマイクは他の隊の戦果の確認を開始した。
「敵空母1隻の1~2発命中なるものの損傷度合い不明」
「敵小型空母1隻に2発命中。損傷大!!」
B24の機上レシーバーを通して2つの報告が飛び込んできた。どうやら編隊全体で2隻の空母に損傷を与えることに成功したらしい。
「150機以上のB24で攻撃をかけた割には戦果が少ないと感じないこともないが、第1波の連中が空母に全く命中弾を与えれなかったことを考慮すると納得すべきかもしれぬな」
マイクが憮然とした表上で戦闘結果を分析した。
あとは成都の基地に帰投するのみだった。
3
敵重爆部隊第2波の攻撃によって被弾した空母は「山城」「千歳」の2隻だった。
「山城」には250キログラム爆弾と思われる爆弾が2発命中したが、250キログラム爆弾対応の装甲を甲板に張っている「山城」はその全てを弾き返すことに成功していた。
しかし、同じく爆弾2発が命中した「千歳」の損害は遠目から見てもかなり酷いものだった。
「千歳」は水上機母艦改装の軽空母であり、防御力が「山城」と比べてもかなり低かったため命中した爆弾の内1発が飛行甲板を貫通して格納庫内で炸裂したのだ。
辛くも沈没だけは避けることが出来た「千歳」では既に懸命の消火活動が始まっていたが、損傷度合いの酷い「千歳」が戦列に復帰できるかはまだ分からなかった。
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