第92話 最後の出撃

1945年6月



 連合艦隊膝下の各部隊に「決戦準備」が発令されたのは1945年6月1日のことだった。


 呉軍港には既に第1機動艦隊や他の艦隊に所属する艦艇が集結しており、その戦力はGFが出せるほぼ全ての戦力であった。


第1機動艦隊

司令長官 山口多聞中将

参謀長  草鹿龍之介少将


第1航空戦隊「大鳳」「赤城」

第2航空戦隊「山城」「瑞鶴」

第3航空戦隊「飛龍」「祥龍」「瑞龍」

第4航空戦隊「天城」「葛城」

第5航空戦隊「千歳」「千代田」


第1戦隊「大和」「武蔵」「長門」

第2戦隊「金剛」「榛名」「比叡」「霧島」


第4戦隊「高雄」「摩耶」

第5戦隊「那智」「羽黒」

第7戦隊「熊野」「最上」

第8戦隊「利根」「筑摩」

第10戦隊「陸奥」「大淀」


第1防空戦隊「青葉」「衣笠」「古鷹」「加古」

第2防空戦隊「阿賀野」「能代」「矢矧」「酒匂」

第1防空駆逐隊「秋月」「照月」「涼月」「初月」

第2防空駆逐隊「新月」「霜月」「冬月」「春月」


第2駆逐隊「村雨」「夕立」「春雨」「五月雨」

第4駆逐隊「嵐」「萩風」「野分」「舞風」

第8駆逐隊「朝潮」「満潮」「大潮」「荒潮」

第9駆逐隊「朝雲」「山雲」「夏雲」「峯雲」

第10駆逐隊「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」

第16駆逐隊「初風」「雪風」「天津風」「時津風」

第17駆逐隊「浦風」「磯風」「谷風」「浜風」


木村艦隊

司令長官 木村昌福少将

参謀長  大下努大佐

第9戦隊 「大井」「北上」

駆逐艦8隻


「第1航空戦隊『大鳳』『赤城』出港します。第2航空戦隊『山城』『瑞鶴』続きます!」


「第1防空戦隊、第2防空戦隊出港します!!!」


 木村艦隊旗艦の軽巡「大井」の艦橋からは順次出港していく第1機動艦隊各艦の勇姿を一望することができた。


「ついに決戦だな」


 木村昌福少将が港内にいる多数の艦艇を見つめながら呟いた。


「2度もマリアナ諸島を攻略するために出撃してついにその目的を達することが出来なかった米艦隊が台湾に本当に来ますかね?」


 参謀長の大下努大佐が首を傾げた。太平洋には多数の要地があるのにも関わらず、何故米艦隊が台湾に来ると上層部が決めつけているのかが不思議だったようだ。


「来るさ。必ず」


「多数の損害を出したあげく遂に米軍はマリアナ諸島の攻略を成し遂げることが出来なかった。それにも関わらず3度目を許してくれるほどアメリカの世論も甘くはない」


「そんでもって必然的に米軍が来襲する場所はフィリピンか台湾に限られるわけだが、その2択ならば今から我が艦隊が展開する台湾にくるに決まっている。なんせ、敵さんは拠点の攻略と同時に我が艦隊の撃滅も目論んでいるからな」


「つまり、我が艦隊が米艦隊を台湾という決戦場に御招待申し上げるということですか・・・」


 木村の説明を聞いて大下は合点がいったようだ。


 木村と大下がこのような話を続けている間にも第1機動艦隊の各艦艇は順次出撃を開始し、やがて木村艦隊にも出港の順番が回ってきた。


「大井」の機関が力強い鼓動を開始し、「北上」以下の艦艇もそれに続いた。


「さあ、いこうか」


 木村が静かだがはっきりとした声で出撃命令を出した。



 日本艦隊が出港を開始した頃と時をほぼ同じくして米艦隊を出撃を開始しようとしていた。


 トラック環礁の泊地には多数の空母・巡洋艦が舳先を並べて停泊し、艦隊の大多数を占める駆逐艦に至っては数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの数が停泊していた。


 その中で一際異彩を放っている巨艦があった。

 

 モンタナ級戦艦1番艦「モンタナ」、2番艦「オハイオ」


 モンタナ級は日本の大和型戦艦に対抗するために建造された新型艦で、アイオワ級の次級に当たる艦種だ。戦艦の象徴たる主砲は40センチ3連装砲4基となっており、防御力は大和型戦艦に匹敵するとまで言われている。


 モンタナ級戦艦は一時艦自体の建造が中止された艦であり、そのままいけば日の目を見ることがなかった艦種だったが、トラック沖海戦で日本海軍の「大和」「武蔵」がサウスダゴタ級戦艦に対してワンサイド・ゲームを演じたことを受けて急遽建造が再開されたのだ。


 同級は5隻が起工されており、既に3番艦までが竣工していた。


 この強力な2隻に加えて、マリアナ沖海戦での地獄の夜間空襲を生き残ったアイオワ級3隻、サウスダゴタ級1隻が今回の作戦に参加する。


 戦艦の数は合計6隻と日本海軍のそれと比べて劣勢に感じるが、日本海軍の戦艦部隊の半数は、もはや骨董品と化してしまった感がある金剛型であり、いざ、戦艦部隊同士の砲戦という状況になった場合は敵戦艦部隊を圧倒することが確実視されていた。


 そして新型が投入されたのは何も戦艦部隊だけではない。米海軍の主力戦闘機もF6Fから新型のF8F「ベアキャット」に更新されつつあるのだ。同機はまだ正式採用されてから日が浅く、今回の作戦では軽空母2隻に20機ずつが搭載されているに過ぎないがそれでもその優れた性能で日本海軍の艦載機を翻弄することが期待されていた。


 これらの新戦力を揃えた米軍は満を持してトラック環礁から出港していったのだ。

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