第二話 竜紋淵争奪戦
「おー、あんたらがあれか、教主サマが用意したっていう、助っ人さんかい? まー、ゆるゆるやってくれよなー」
ずいぶんと気の抜けた様子であたしたちを出迎えたのは、同じぐらいの年頃の男性だった。
彼は自分のことを、
〝雨の恵み〟は、宣言どおり車を出してくれた。
大型
辿り着いたのは、緑深き山奥だ。
村は
「この現場の責任者はおれだ。だから、なるべく問題を起こさないでくれ」
「……? それほど村の方々と
藍奈の疑問を受けて、蒼次郞さんは
うーん、印象が悪い。
柄も悪い。
「ここの連中はおれらが最後の頼りだ。どんな
「品性を疑いましたが、続けて」
「いいねぇ、素直で。あとでおれの部屋にどう? 美人はいつだって歓迎だ。そっちの、とっぽいねーちゃんも一緒にいいぜ?」
「? 普通に
つれないねぇと蒼次郞さんは顔をゆがめ。
「この土地をほしがってる連中がいるのさ。いまは枯れ始めてるが、元は豊富な水源だ。いまの世の中、価値は計り知れないだろ?」
なるほどと頷く。
しかし、そんな地上げ屋まがいのことをする連中というのは、いったいなにものなのだろうか?
「それよりだ」
続きを聞こうとすると、彼は露骨に話の向きを変えた。
「さっそく、おたくらには現場を案内するぜ。おれは成功しようが失敗しようが構わねぇが、おたくらだって仕事のやり方が解らないままってのは、困るだろう?」
見た目こそスレているものの、彼の言っていることはどこまでも真っ当だった。
早速、あたしたちは〝
「
「そうだろー。おれたち気が合うんじゃね?」
「
藍奈の肩を抱こうとした蒼次郞さんが、ぺしりと手を払い除けられるのを横目に。
あたしは、竜の大滝を見上げる。
二十メートルほどもある
一方で
オールブルー。
いったいどれだけの深さがあれば、これだけの〝青〟が現れるのか解らない。
それほどまでに、滝壺の水はクリアーで、そうして
「深さは測定不能だって話だ。大昔からここにあって、水神サマが眠っているなんて伝承もあるとかないとか。過去にはダイバーが潜ったらしいが、帰ってこなかったって噂だぜ」
「神秘的って、こういうのを言うんだろうね」
「けっ」
嫌そうに唾を吐く蒼次郞さん。
……どうやら、彼はリアリストらしい。
「おう、現実主義者だ。だから仕事はするぜ。あっちに見えるのが、
彼が指差した先、滝壺のほとりには、それなりの大きさの小屋と幾つかの足場、そして舞台が用意されていた。
位置的に、どうやら舞台や小屋は、枯れた川の上に立てられているらしい。
滝壺の近くでこの程度の水量しかないというのは、
万が一増水すれば、取り残されることなく撤退できるように、設備のほとんどが簡易的なものであることが見て取れた。
そんな舞台の上では、太鼓や笛が演奏され、白装束の女性が舞を踊っている。
単調で、しかし激しさのある踊りだった。
「あれが雨乞いの舞で、踊ってるやつらを〝
「踊るのは女性だけなの?」
「んなこたない。ただ、なぜか男の求人は少ない。楽団には多く来るんだが……」
確かに、よく見ると
「深い意味はないのさ。で、あんたらにはこのあとすぐ、舞の振り付けを覚える研修をやって貰って、覚え次第実戦に投入する」
「
「言っただろー、人手が足りない。
それは問題ない。
相方も、静かに頷いている。
「舞は別に
それが守れないなら、仕事は任せられないと彼は言った。
であれば、頑張るしかない。
あたしと藍奈が、振り付けを覚えるべく、蒼次郞さんに案内され小屋へと向かった――そのときだった。
村の方から、大きな爆発音が響いた。
「ちっ! あのやろうども、また来やがったのか!」
あたしは、藍奈と顔を見合わせて。
彼のあとを、追いかけた。
そして。
「よっしゃ! そいじゃあまあ、景気よくぶっ飛ばすぜ! 全国的な宗教団体だかなんだかしらねーが、アタシの島でずいぶん好き勝手やってくれたな! こいつは
獰猛な笑みとともに、無数の
スーツを着込んだあからさまに
その中心に立っていたのは――
「やっぱりおたくらか、帰ってくれ
「おー、蒼次郞
立っていたのは。
「
「あン? なんでヴァカ娘が、ここにいやがる……?」
悪趣味な黄色いスーツに身を包み。
サングラスで両目を隠した長身の
相変わらずの調子で、あたしを
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