第六話 神を盗んだ男
「古くは
「雪は深く、畑は
人々は山奥へと分け入り、わずかな食料や、水を得た。
隠し湯もまた、そのころ見つかったものらしい。
「そうして、
やがて、共存する道を選んだのと、
「〝ウカハミさま〟は我らに恵みを与えてくださる、
「……類例はあります」
藍奈が、顎に手を当てながら、口を挟んだ。
「国の天然記念物に〝テングノムギメシ〟というものがあります。文字通り麦飯に似たもので、これは土中から採れる微生物の集合体なのですが、飢饉のおり、実際に人々はこれを食べて飢えを
しかし、と。
巫女は、あたしにだけ聞こえる声量で
老人が頷く。
「とかく、ご先祖さまたちは、うまく山と付き合っておった」
長く、長い
十年前、事件が起きた。
「
それが、いま隠し湯リゾートを営む管理人さんであり。
「わしの、
以来、村は
「村の仲間たちは、夜になるたび数を減らしていった。当然のことじゃ、
村は日に日に崩壊し、反比例して管理人さんの商売は成功していったのだという。
「これはわしらに下された罰じゃ。だからそれはいい。だが……あやつの将来が不安でならん」
老人は、そんな風に話を締めくくろうとした。
物語を閉じようとして突然、顔を笑みにゆがめた。
「そうじゃ。お嬢さん方は隠し湯で働いておるのじゃろう?」
頷くあたしたちに、年老いた狩人は酷く、とても
「あの湯の効能は〝
実際に使って、効能を確かめてみては?
赤ら顔の老人は、
あたしは、酷く嫌な気持ちになって、胸元の魔除けを強く握る。
老人は、やがて笑みを消し、こう締めくくった。
「もっとも、隠し湯すら――〝ウカハミさま〟のものじゃがな」
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