第8話 部屋移動。
「以上で、集団面談を終わる。」
「「「「ありがとうございました。」」」」
私は、席を立ち面談の部屋を後にしました。
そのまま、母上に報告をしに、母上の部屋に行きました。
「いい方がいらっしゃった?」
「はい。数名ほど気になる者がおりました。」
「そう?良かったわね。」
「はい。では、失礼します。」
優しい笑顔で頷く母上に見送られ自室へと戻りました。
このフリーア王国における後宮は、完全な区画分けがされており、他の王妃や他の親族を見かける機会が少ないのです。
これまでの歴史の中で色々あったらしく、その際に後宮は大改装されて今の形になっているそうです。
各王妃にはエリア分けされた区画があり、その中に入るには同じ王妃であっても他の王妃の専有エリアに入ろうとすると厳しくチェックされます。
外も同様に壁により区切られており、四六時中警備がひかれています。
それ以外に、共同スペースの様な場所があります。
そこ共同スペースを使用できるのは、10歳を越えた王族だけですから、私が利用できるようになったのも最近です。
共同スペースを利用するのはお互いに出てきて話をしようと計画した時ぐらいではないでしょうか?
私は自室に戻ると、ソファに体を投げ出しました。
「ふぅ。」と息を吐き、疲れた体を横にして体の力を抜きます。
すると睡魔が襲ってきましたが、このまま寝る訳にもいきません。
「姉上達は、私に何か御用ですか?」
「あれ?バレちゃった?」
「へぇ~。凄い。何で分かったの?」
「バレバレですよ。家族なんですから。」
私でなければ分からないと思いますけど。とは言わないです。
それほど完全に双子の姉上達は隠れていらっしゃいました。
固定スキル【家族愛(ファミリー・ラブ)】のおかげで分かるだけです。
「う~ん。そっかぁ~。ルシファリオちゃんは凄いね~。」
「本当にそうなの?怪しいなぁ~。」
「サリア姉上とアリア姉上は、何か用事があったのではないのですか?」
「「無い。」」
シンクロした二人は、特別な理由があって来た訳では無く、ただ会いたかっただけとの事です。
「で、どうだったの?」
「どうとは?」
「従者選定の事よ。女は居たの?」
「ええ。居ましたよ。」
この国においては、従者は男でなければならないモノでは無い様で、女性の候補者も居ました。
女性でも応募できる当たり、男女差別はさほど無いのかもしれません。
「「ちっ!」」
「ちっ?」
「「あぁ、何でもないわ。」」
姉上達の顔が一瞬、とても怖い顔になっていた気がしましたが、直ぐにいつもの表情に戻りました。
「で、何人採用する予定なの?」
「一人にしようかと思っています。」
「一人?」
「ええ。私は13番目ですし、さほど業務が無いかと思いまして。」
「それはダメよ。せめて三人くらいは用意しなきゃ。」
「そうですか?」
「そりゃそうよ。一人では負担が多すぎるわ。」
「そういうモノよ。だからせめて三人は考えなさい。」
「わかりました。」
ここは素直に聞く事にしようと思います。
「うんうん。ルシファリオちゃんは素直でよろしい。」
「いつまでも、素直なルシファリオちゃんで居てね。」
二人の姉上達に挟まれて頭をワシャワシャにされました。
その後、姉上達との会話を楽しみました。
◇◇◇◆◇◇◇
「では母上、王宮の方へ移ります。」
「ちょくちょく顔を見せるのですよ?」
「はい。心得ております。」
私はメイド三名と従者三名が決定して、一週間後には部屋を王宮へと移す事になり、母上に挨拶をしている所です。
王族の中でも男子はこうして10歳になると後宮を出る事になる訳ですが、女子は母上と同じ場所に部屋を与えられており、王宮へ移る事はほとんどありません。
母上のおられる後宮を出ると、そこには私が雇った従者達が立って待っていました。
「では、案内を頼む。」
「はい。こちらです。」
三人の内の一人が先頭に立ち案内をしてくれます。
後の二人は私の後ろから着いてくる感じです。
今、先頭になって私を案内してくれているのが、エルヴィンさんで平民の出なのですが、シード学園において優秀な成績を収め、特待生として院に進んだらしく、現在は19歳。
そして、後ろからついて来ている内の一人は政務的能力が高いと思われる人で元地方貴族の政務官だった人平民で、名前をケヴィンさんと言い、奥さん子持ちの28歳。
最後の一人は武術が得意な女性で、シード学園を卒業後に軍部に所属していた人でやはり平民で、どことなくシーラ姉上を彷彿とさせる23歳のレオナさん。
全てを年上で構成した従者に囲まれて、私の砦となる王宮の部屋へと行きます。
全員を平民出身で固めたのも意味があります。
そもそも一人と思っていたので、エルヴィンさんは決定していました。
その後、姉上の意見を聞き入れ三人としたので、エルヴィンさんを従者長にしたいという思いがあって貴族は選びませんでした。
とは言え、後の二人は年上ですから、エルヴィンさんにとってやり易い環境と言う訳ではありませんね。
難しい所があると思いますが、少なくとも選民意識を持っているであろう貴族よりはマシでしょう。
是非とも、エルヴィンさんには頑張って貰いたいものです。
彼等を採用した理由はそれだけではありません。
そうです。
私のあの質問に対しての回答が私の望む回答だったからなのです。
それについては、おっと、どうやら人がやって来たようです。
「おい、ルシファリオ!」
移動の最中に声をかけて来た人は、私の腹違いの兄の一人で第十二王子カストロ・フォン・フリーアです。
第三王妃の息子で、ぽっちゃりとした体型の持ち主ですが、金髪の蒼目という目立つ顔立ちをしています。
痩せれば、イケメンになるかもしれませんね。
「これは、カストロ兄上。ご機嫌麗しく。」
「ふん。まともな挨拶は出来るか。まぁよい。今日からは共に王族の男子として共に行動する事はあろう。予の邪魔だけはせぬように、十分に気をつけよ。」
「かしこまりました。カストロ兄上の邪魔にならぬ様、気をつけましょう。」
「わかっておるならば良い。」
その言葉を残してカストロ兄上は去って行きました。
初日からイチイチ牽制してくるとは、暇人なのですね。
「行きましょう。」
「はい。」
思わぬ出会いがありましたが、その後は問題なく王宮の私の部屋へと辿り着きました。
嫌味をそんなに聞かなくて済んで良かったです。
神※※※※※様に感謝を。
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